54話 ページ7
「えっと……なんで君が答えるんだ？俺はAに聞いたと思うんだけど」
「ええ。聞いてましたとも、頼んでるにしては随分と強引な言い方でしたけどね」
「なっ！」
「反論があるんですか？Aが何か言いかけた時に『やってくれるよな』ってまるで圧をかけるように言っていた先輩が？」
東雲くんがそういうと先輩は何も言い返せないのか黙ってしまう。私は口も出せずただそのやり取りを見ることしかできなかった。
「というか、元からその為に先輩に確認したつもりだったんですけどね。それにAはまだ着替えすら終わってない状態なので手伝いは無理です」
「……Aさん本当に難しいか」
『！……はい、すみません』
とようやく言いたかったことを伝えると先輩は苦い顔をしてから「わかった」と小さく返事が返ってきた。
それに詰まっていた息がそっと吐き出される。でも、変に強張っているせいか息を吐き出すのにかなり時間がかかったし重く苦しかった。
本当やめてほしい……ステージ前にこれ以上余計ごとを増やさないで欲しい。
「……ということなので俺たちは一旦離れますね。10分前には会場に着くようにしますので。では」
一言そう言い残して東雲くんは私の腕を掴んで瑞希と類がいる所まで歩き出した。フリーズしたみたいに動けなくなった体を彼は引っ張ってくれてあの場から離れさせてくれる。
正直断った時に見えたあの先輩の顔っていうか目……そしてあの場の何とも言えない息苦しい空気に今は1秒でも触れていたくはなかった。だから、少しありがたい……
「おい、大丈夫か」
『……まあ』
「……」
答えるのすら一苦労になっている今何も聞いてこないのは本当にありがたかった。そんな状態で出来るのかとか、無理なんじゃねぇかって言われるよりは無言の方が私にはいい。
それに今の彼なら私がどれだけなんと言われようと辞退する気がないってことぐらいわかってくれてると思う。その証拠に掴んでくれている手は左足に負担がかからないようにと支えるように引っ張ってくれている。運ぶって手もあった筈なのに彼はさっきのように持ち上げるようなことはせず歩かせてくれた。
多分私が気にしていることを汲んで、気遣ってくれたから。
そんな彼の手から伝わる温もりと力強さが更にそう思わせてくる。
こんな私のことに気づいてくれた彼だからこそ、私は……二人とはちょっと違うけど……信用、しているのだろう……
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彼岸(プロフ) - みそさん» ありがとうございます！！ここ最近すごい寒いですもんね気をつけておかなければ！みそさんも体には気をつけてください (1月15日 21時) (
レス) id: e50e6542f9 (このIDを非表示/違反報告)
みそ - 話めっちゃ好きです！寒いので風邪引かないように頑張ってください！ (1月13日 19時) (レス) @page1 id: 10491548f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：彼岸 | 作成日時：2024年1月12日 19時
