あさ ページ29
.
「んぅ…いだぃ……」
「ふふっ、」
小鳥のさえずりが聞こえる頃
寝苦しい
眩しい
誰かの笑い声が近くで……
ゆっくり目をこじ開けると、ぼやけた顔が視界を埋めつくしていた
「やっと起きた」
だんだんとピントが合ってきて、
「おはよ」
そこには、私に跨っている大野智(18)がいた
「な、な、……」
朝に似合う爽やかな笑みを浮かべて、その人はベットから降りた
「は、はやおきだね…」
いつもなら、私が必死に起こしているっていうのに…
なんだかヒリヒリする頬を抑えながら、上半身を起こす
テーブルを見てみると、朝食が並べてあった
さとしは、エプロン姿でお茶を注いでいる
これは、夢……？
こんな気の利いたこと、されたことない……
一体何が…
バシャバシャと冷たい水で顔を洗った
さとしが作ってくれた朝食を、黙々と食べる
てか、ご飯作れるなら毎日でも作って欲しい……
向かい側には一段と優しい顔でこちらを見てくるさとし
なんなの、これ……
調子狂うんですけど…！
「なんか企んでる？」
「へ、なんもないよ」
不意に手が伸びてきて、私の口元に触れたと思ったら、そのまま何かを食べた
何が起きたかまだ働いてない頭で理解しようとした
「そ、そういうの禁止！！！」
「ん？」
勢いよく立ち上がった私を、さとしは何も分かっていないような顔で見上げた
そんな顔も、可愛い
「ごちそうさまでした！！！」
20倍速くらいで、学校に行く用意をすませる
「いってきます！！」
「A、テスト頑張って」
「う、うん」
扉を音を立てて閉めて、一息つく
.
さとしは、何もわかってない
私がどれだけ抑えているのか
はやく、はやくしないと
私、もう無理そうだよ
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作者名：ひなな | 作成日時：2019年8月30日 4時
