香坂君に伝えたい3 ページ26
「、Aさん…？、なにしてんの、離してよ、」
『イヤ』
抱きしめるというよりしがみついているという表現の方が正しいかもしれない。
否定の言葉を送るとゆるりと肩を掴み引きはがそうとするも、ぎゅっと腕の力を強めると彼はあっけなく抵抗を止めた。
『…香坂君は、確かに何考えてるか分かんない時がある』
「、…そうしてるからね。」
『顔に出やすいっていうのも分かる』
「うん」
『けど楽しそうな時だって、ちゃんと分かる』
え？と上から降る声を気にせず彼の制服に顔を埋めたまま半ばやけくそになり思いの丈を吐き出す。
『マスクしてたってちゃんと分かる。私の事からかってる時の意地悪な目、いつも楽しそうだし、』
「ちょっ」
『猫撫でてる時なんか日向ぼっこしてるおじいちゃんみたいだし、』
「え、何それ、」
『ゲームクリアした時なんかマスクの下の口元まで分かっちゃうくらい嬉しそうにするし、』
「っ…」
『ニタニタ顔もふわふわ顔も子供っぽい顔も全部、ちゃんと分かる』
腕の力を弱めて一歩分距離を取る。痛そうなくらい赤くなった目を大きく見開く彼の両手を取り自分の小さな手で可能な限り包む。
『急いで変わる必要なんかないよ、これからゆっくり変わっていこ』
「でも、」
『変わろうと思ってくれたのが私の為だっていう事だけでも、死んじゃいそうなくらい嬉しい』
「、」
『もうバレバレだと思うけどね、私、香坂君の事がー……』
「待って、！」
待って。ともう一度、今度は落ち着いた口調で言う香坂君に指示通り口を紡ぐ。
されるがままだった彼の両手は一旦離れ、今度は私の手をすっぽりと包む。少し冷たい彼の指先を感じながら彼の言葉を待つ。
「ここまで言わせておいてほんと情けないんだけどさ、」
『うん』
「…まだ言えそうにない。ごめん」
『平気だよ』
「でも絶対言うから。ちゃんと、俺から伝えたいから、」
『うん』
「それまでもう少しだけ、待っていてもらえますか？」
真っ直ぐな表情は私を際限なくどきどきさせる。マスクがない方がいいけどこんなにどきどきしていたらこの先が思いやられる。じわじわと滲む視界のまま香坂君をしっかりと見つめて笑う。
『気長に待っていますので、これからもどうぞよろしくお願いします！』
すると彼はまた目に涙を浮かべ始めて、こちらこそ、ととびきりの笑顔を返してくれた。
泣きながら笑う2人の声に交じって、本日何度目かも分からないチャイムが小さく響いた。
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七瀬川 - 凄く面白かったです！香坂君凄い好きです。 (2017年5月16日 23時) (
レス) id: 231cbd38fb (このIDを非表示/違反報告)
風見鶏(プロフ) - たつどしさん» たつどしさんありがとうございます！最後まで２人を見守っていただけて嬉しい限りです！色々と反省点はありますが、とても楽しかったので今後も活動していきたく思います、どうぞよろしくお願いいたします！ (2017年4月30日 21時) (レス) id: e76ba324a2 (このIDを非表示/違反報告)
たつどし(プロフ) - 完結しましたね！ 最後の最後までとっても面白かったです。なんかこの２人が結ばれることを望んでいたのに今はちょっと寂しい気持ちです笑風見鶏さんの小説の書き方がすごく好きです！これからも、占ツクを続けて下さることを願っています笑お疲れ様でした( +△+) (2017年4月29日 7時) (レス) id: 15219600b7 (このIDを非表示/違反報告)
風見鶏(プロフ) - おぼろさん» おぼろさんから…コメントが…！見に余る光栄に小躍りしそうです、ありがとうございます！今後ともじれったい香坂君を暖かく見守ってやってください！ (2017年4月19日 12時) (レス) id: 9da5b5b6a8 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろ(プロフ) - この小説は私の理想のレトさんの学生恋愛像です！！！普段ソワソワしながら読んでいる感想を伝えたくてコメントしてしまいました・・！ 楽しみにしています！( +▽+) (2017年4月19日 11時) (レス) id: 8fa9f4e5bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風見鶏 | 作成日時：2017年4月5日 17時
