香坂君と勉強 ページ19
『この辺は出すって言ってたよ』
「まじか。暗記しとこ」
二つ分の広さになった机に教科書やワークを散らす。トンと真ん中に置かれた教科書の一部を指差すと、彼は手元のノートにそれを書き写す。
ピタリとくっついた机と、いつもより少し近づいた距離。とくとくと弾む心臓の音は賑やかな教室に加勢して私から落ち着きを奪おうとしていた。
(ただテスト範囲を教えてるだけ…大丈夫、大丈夫)
何度も言い聞かせるもノートに視線をやる彼の瞳の涼しさがいつもより近くて、見る度にまたとくとくが早くなっていく。これ以上早くなったら彼に届いてしまいそうで怖い。距離を取ろうにもそんな事をしたら不自然だし、彼の集中力を欠くのも気が引けた。
「Aさん？」
『、うん、何？』
「ごめんね、付き合わせちゃって」
困惑が顔に出ていたようで、彼はそれを”私に無理をさせている”という解釈に落ち着かせたらしい。そういう優しさでさえ今の私には毒だと言うのに、まったくこの人は。
自分の確認にもなるから平気だよ、と思ったままを告げると安心したように目元が弧を描き再びペンがサラサラと走る。
(見惚れちゃう所なんか挙げたらキリがないけど、)
見たらどきどきが酷くなる事は分かっているのに吸い込まれる。綺麗な目。
顔を落とす角度に合わせて流れる黒髪。さらさらしてて優しい黒色。
時々眉間にシワを寄せてペンを止めて、それから、ここさ、といつもの丸みのある鼻声で質問をしてくる。
『それで多分、こういう説明なんだと思うよ』
「あー。そっか、なるほど」
説明の過程が分からなくならないようにメモと矢印を引っ張って、よし。と小さく言うと彼はノートから視線を私に向ける。
ニカ、と目元だけでも充分に分かる晴れやかな笑顔でお礼を言われてどくんと大きく跳ねる鼓動。
どういたしましてと返す私はいつも通り笑えてるのかな。顔が赤くなってそうで心配。
最近知ったが私は香坂君の笑顔にかなり弱いようだ。
「今度なんかお礼するね」
『いいよ、このくらいでお礼なんて』
「ううん。凄く助かったから。ね？」
ほんとありがと、と言って、今度は優しく目元を緩ませる。
分かってやっているのだろうか。この時間だけで私はすっかり体力を削られてしまった。
恋ってこんなに体力がいるのか、鍛えなくちゃかな。
体力の回復と何より火照る心を少しでも落ち着かせたくて言った、ジュースが飲みたいというそれを報酬と解釈した君は、また嬉しそうに笑った。
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七瀬川 - 凄く面白かったです！香坂君凄い好きです。 (2017年5月16日 23時) (
レス) id: 231cbd38fb (このIDを非表示/違反報告)
風見鶏(プロフ) - たつどしさん» たつどしさんありがとうございます！最後まで２人を見守っていただけて嬉しい限りです！色々と反省点はありますが、とても楽しかったので今後も活動していきたく思います、どうぞよろしくお願いいたします！ (2017年4月30日 21時) (レス) id: e76ba324a2 (このIDを非表示/違反報告)
たつどし(プロフ) - 完結しましたね！ 最後の最後までとっても面白かったです。なんかこの２人が結ばれることを望んでいたのに今はちょっと寂しい気持ちです笑風見鶏さんの小説の書き方がすごく好きです！これからも、占ツクを続けて下さることを願っています笑お疲れ様でした( +△+) (2017年4月29日 7時) (レス) id: 15219600b7 (このIDを非表示/違反報告)
風見鶏(プロフ) - おぼろさん» おぼろさんから…コメントが…！見に余る光栄に小躍りしそうです、ありがとうございます！今後ともじれったい香坂君を暖かく見守ってやってください！ (2017年4月19日 12時) (レス) id: 9da5b5b6a8 (このIDを非表示/違反報告)
おぼろ(プロフ) - この小説は私の理想のレトさんの学生恋愛像です！！！普段ソワソワしながら読んでいる感想を伝えたくてコメントしてしまいました・・！ 楽しみにしています！( +▽+) (2017年4月19日 11時) (レス) id: 8fa9f4e5bf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：風見鶏 | 作成日時：2017年4月5日 17時
