…理解 ページ13
嫌な汗が止まらない。
由伸の「許さない」の意味が分かってしまったから。
由伸も、Aちゃんの事が好きなんだ。
A:「何なんあいつ!!!!」
颯:「……きまぐれだよ、きっと」
怒るAちゃんを今すぐに抱きしめたかった。
まだ自分のものでもないのに、俺だけのものだって証明したかった。
由伸にも譲れないんだ。
颯:「ごめんね、俺のせいで誤解招いちゃって」
A:「……元はと言えば私がここに連れてきたんが悪かったんや」
颯:「本当たまたまだよ。俺は気にしてないから…」
A:「…おん」
颯:「でも、俺の言ったことは忘れないでほしい。男は単純だから、もっと恋に興味もってほしいな」
A:「……心のどこかには」
颯:「…ありがとう」
俺は君に向けて言ってるんだ…なんて言えなくて。
視線を向けるのも俺だけにしてなんて言えなくて。
まだまだこの恋は成就しないと感じた。
颯:「…そろそろ行こうか」
A:「…そうやな、私仕事あんの忘れてたわ」
颯:「俺も練習行かなくちゃ」
A:「…そーいち」
颯:「ん??」
少し歩きだしたところで彼女が俺を呼び止める。
A:「……ありがと」
颯:「…??」
A:「も少し、積極的になってみるわ。そーいちも好きな子と結ばれればええな」
その言葉がどれ程鋭利な言葉だかAちゃんは気づいてない。
A:「ほな、行くわ」
颯:「……うん、お疲れ」
A:「お疲れさん」
俺の横を通り過ぎる時彼女の髪からいい香りがして胸が締め付けられた。
苦しくて、立っていられなかった。
颯:「かっこわりぃ……何で言えないんだよ……」
本気で好きなんだ。
他の誰にも渡したくない。
好きなのに、言えない自分に嫌気が差す。
颯:「Aちゃん……」
誰もいない空間に消え入る声。
愛しい彼女の名前が消えていく。
颯:「好きなんだ……」
本人が居なくちゃ意味がないのは分かってる。
でも声に出さないとどうにかなりそうなんだ。
由伸より俺の方が先に恋をした。
君を想うのも俺の方がもっと。
比べ物にならないぐらい、あいつに負けてない。
颯:「……早く振り向いてよ」
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作者名：柘榴 | 作成日時：2024年3月23日 20時
