そういうの、ずるい。【二口堅治】

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三年生になって、最上級生というものにやっと慣れてきた。
バレー部が昨年より忙しそうに見えるのは、やはり三年生だからだろうか。


今年は例年より女子生徒が多く入ったらしい。とは言っても、学年にいる女子生徒の数は十数人程度だけど。

例え数人でも女の子が増えたことはとても嬉しいのだ。
嬉しいんだけど……。

その女の子たちが、二口先輩かっこいい、なんて言っているのを聞いてからずっともやもやしている。


そもそも、二口くんが普通科の学校にいたら、きっと大層モテるであろう。

だって、あんなにかっこよくて、バレーが上手で、やさしいんだよ？

きっと、二口くんもわたしなんか目に入らず、かわいい女の子と付き合っているんだろうな。
……なんて、想像したらもっともやもやしてきた。


今だってそう。
舞ちゃんと二口くんは部活の話をしているだけなのに。

最近はインターハイ前だからか、二人で話し込んでいることが多い。
そこに無関係のわたしは入れなくて。でも、だから最近はクラスの男の子が話しかけてくれて、友達の輪が広がった気がする。

……だけど、二口くんと話す機会が減ったのはすこし寂しい。ラインの回数も減って、それが仕方のないことだとは理解しているけれど。


次は移動教室だし、そろそろ移動しないと。
最近は舞ちゃんに先に行っていてと言われることが多いから、声をかけてくれたクラスメイトと行こうかな。

次の教科について話しながら二人の傍を通る。

否、通ろうとした。

グッと肘の辺りを引かれて、つんのめる。
驚いて振り向くと、同じように驚いた表情をしている二口くんがいた。




「ど、どうしたの」

「……あ、いや、悪い。なんでもない」




すっと離される手を名残惜しく感じるのは何故だろう。

白石さん？と呼ばれて追いかける。

なんだったんだろう。彼の表情を見るかぎり、無意識的で。
振り返ればまだ舞ちゃんと話している二口くんがいて、目が合ったような気がした。

この、心を疼く感情はなんだろう。
わたしはそれに気が付かないふりをして、蓋をした。




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