そういうの、ずるい。【二口堅治】

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わたしの学校は、いわゆる工業高校だから授業を受けるのに移動が多い。

そして、この前のことも相まっていつもは気が付かないのに見つけてしまう。


つなぎ姿の、二口くん。
たしか、バレー部の青根くん、と、なんだか盛り上がってるから話しかけない方がいいのかな。でも、無視するのは感じ悪いよね。

なんて考えたところで隣にいた舞ちゃんが二人に声をかけた。
さすが舞ちゃん。さすがマネージャー。




「A、こっちは青根ね」

「あ、白石Aです……」

「……」




自己紹介をすれば返ってくるお辞儀。無口な人なのかな。さっきも二口くんだけが話してたかも。

青根くんは二口くんより背が高いから、目線はほぼ真上だ。顔はちょっとこわいかもしれないけど、律儀なひとって感じがする。あ、でも眉毛ない。




「なあ、」

「ふっ、ふたくちくん！」




視線を遮るように視界に無理やり入ってきた整った顔のせいで、また頬が熱を持つのがわかる。

つなぎを着ている二口くんは、いつもの男子高校生とはまた違ってかっこいい。二口くんが授業受けてるところ、見たいかも。


ちょっと不機嫌そうに、口をもごもごさせている二口くんにどうしたらいいかわからなくなってしまう。舞ちゃんは青根くんと部活の話をしているみたいだし。

それから彼はすこしだけ視線を泳がせてから、しっかりとわたしの方を見て籠っていたそれを言葉にした。




「ライン、交換してほしい」

「ライン？」

「用がないときでも話したいんだけど」




だめ？なんて上目遣いされちゃ断れないよ。
思わず、だめじゃない、と大きな声が出てしまったけれど、二口くんは上機嫌にスマホを振ってくる。

彼を真似てスマホを振ると表示される二口堅治の文字。それだけで、最近はどきどきする。


よろしく、ってかわいいスタンプを押せば同じように返ってきて、目の前にいるのになんだか可笑しくて、二人で顔を合わせて笑ってしまった。




‥

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