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曇天の空の下、風が騒めき様々な思惑と共に渦巻く。
城内を走る兵達、噂話をしている下っ端の声、人の出入りが多いのか何度も確認しにやってくる城門の男についてはすっかり顔を覚えてしまった。
今日も粛々と質問に答え、情報を流すAの斜め後ろには変わらず寡黙な男が佇む。
ただおとなしく、控えめに、相手を刺激せずに話す彼女の小さな背中を見つめながら、男は昨日のことを思い返していた。
『貴方がこちらに雇われている期間はいつまでですか？』
何気なく、しかし声を潜めて問われたのは、何度目かの食事を運んだ後。
座ったまままっすぐ見上げてくるAに男は僅かに目を細める。
「聞いてどうする」
『参考までにと思いまして』
「…期間は決まっていない」
『では、今出されている命令はなんでしょう？』
「…お前の監視と身柄の確保だが、…逃げるつもりか？」
語尾を強めて圧力をかけるが、彼女は違うと首を振る。
一度視線を外へ移して少し周りの様子を探った後、また一つ言葉を紡いだ。
『貴方のお仕事の邪魔はいたしません。ですが、一つ提案と言いますか、お願いがございまして』
「……またか。今度はなんだ」
『私と契約していただけないかと』
布の下で口を閉じる。
敵相手に何を言ってるんだ、そう告げようとしたところ、彼女の方が先に口を開いた。
『雇われている期間が決まっていないのなら、実質命が出ている間だけがこの国に属している期間でしょう。であれば、この命が終わったら、または背くことがなければ重複して今からでも私と契約していただくことは可能では？』
「…そんなもの屁理屈だ」
『屁理屈結構。少なくとも貴方にとってはどちらの国がどうなろうと、あまり関係はないでしょう？こちらに来ていただければ、そうですね、今よりは少し面白いことになるかもしれません』
そう微笑む彼女に男は沈黙を貫く。
普通なら無駄な命乞いだと吐き捨てるところだ。
だがそれを言わなかったのは、道中の彼女をずっと見ていたから。
取り乱した後の覚悟と交渉、今日に至るまでの殊勝な態度、矛盾しているようで一つ先を見据えているような表情と言葉、そして夜中に一人背中を丸めて最低限だけとる睡眠。
何かを考えていることくらいはわかった。
敵対する立場から言えば“企む”といった表現の方が正しい。
それでも自分のやることは変わらないと思っていた。
「…何故、俺に言う」
何度目かの疑問を問いかけた。
彼女と話す時はいつも疑問が口に出る。
『仕事に信念を持つ方は信用できるので』
女は再度裏のない顔で微笑んだ。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
