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かつて美しい緑を誇っていた憩いの地は一部炎に焼かれて痛々しく灰と化した。
未だその傷跡は残ってはいるが、兵や使用人達の整備のおかげか徐々にその姿は以前の整然さを取り戻し始めている。
移殖された木や城下から買い付けた花達が並ぶ場所を抜け、再度整えた芝を踏みしめながら縦横無尽に駆け回るそれを視界に捉えると同時に、
「A！そっち行った！」
離れた場所から大声が飛んだ。
ハッと眼下を見下ろせば靴周りを走り回る小さな黄色。
踏まないよう気をつければ焦りは不思議なステップを生み、その衝撃に驚いた生物はまた別の方向へ駆け出してしまう。
「はは！Aめっちゃ驚いとったな！ええリアクションやったで」
「笑ってないで捕まえろよ！誰のせいだと思ってんの！？」
「俺やな。でもああもちょろちょろされると仕留めてまいそうで、」
「あ？少しでも傷つけたら俺がお前を殺すから」
「…ちっす、すんません、頑張ります」
一気に恐縮したゾムと目が光るひとらんらん。
しかしAはそちらを気にかけている余裕がなく、元気の良いひよこたちを捕まえようとしては翻弄されている。
何とかその内の一匹を誘導して手元のバスケットへと掬い上げたが、予想外にすばしっこく追いきれない。
一匹が更に離れていく中、進行方向にいる人物には見覚えがあった。
『兄さん！捕まえてください！』
声をかけられた相手は、ん？と、呑気な返事を浮かべると、すぐに屈んでその一匹を難なく拾った。
『ありがとうございます…流石です』
「いや、ええけど何の騒ぎ？」
『柵が壊れてしまったようで』
あー…と遠くを見る兄さんの目には既に諦めが浮かんでいる。
未だ小さきものたちと追いかけっこを続ける白の軍服と緑のパーカーを視界に入れ、ため息を吐いた。
「ええよ、手伝うわ」
『すみません…』
「Aのせいちゃうやろ。はよ終わらせよ」
微笑む兄さんは頼もしい限りである。
「お疲れー。大変そうやったねえ」
のんびりとした口調で現れたしんぺい神は、中庭の一角に座り込む三人に優しく笑いかける。
結局一匹しか捕まえられなかったA、途中で飽きていたがひとらんらんによって逃げられなかったゾム、誰よりも働かされた兄さんがぐったりしながら揃ってその顔を見上げた。
「…手伝ってくれても良かったやん」
「ごめんごめん、もう終わりそうやったし大丈夫かなって」
「…ぺ神のそういうとこほんまズルいわ」
非難には耳を貸さず、安堵した表情で戻ってくるひとらんらんに手を振りながら、今日もええ天気やねと彼は一人穏やかに宣った。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
