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とある国に届けられた1通の書状。
荘厳な、しかし無機質な字面を一通り見ると、男はすぐに白手袋から離して机上へ放った。
その顔に焦りはなく、ただ冷たい表情で部屋の面々へ視線を移す。
Aが攫われてから3日目のことだった。
「グルさん、内容は？」
「…先の戦争による我々の外道な行いに対して損害賠償と権利譲渡、国の再興のための条約承認を求む、応じない場合は相応の対応に出る、だと」
「ただの誘拐犯と一緒じゃん」
「てか2年も前に負けた国が何今更出しゃばってきとんねん」
面倒そうに愚痴をこぼすシャオロン、しかしあまり驚いている様子はない。
無言で視線を送るコネシマに、その先にいたオスマンは場に似合わずふわりと微笑んだ。
「ま、いきなり宣戦布告するとは思っとらんかったし、大体予想通りかな。大先生」
「そやね。けどもうちょい遅いかと思っとったけど」
「そこはAちゃんの力やろ」
にこりと笑いかけるオスマンに、ソファーに座る客人はほんの少し得意げに微笑む。
「恐らくそうでしょう。そしてそれがA外交官が無事な証です」
今朝早く一人で身を隠しながらやってきてAを外交官と呼ぶこの男は、我々の幹部に囲まれてもなおいつものように冷静に答える。
内心は様々な感情が渦巻いているが、それを表に出さずに淡々と話す姿に、トントンはいつかの彼女の姿を見たような気がした。
「順調に、かどうかはまだ判断はできませんが、そういうことです。詳細も今回はあちらに託してありますので、くれぐれも下手な挑発には乗らないようお願いいたします」
「…あの男は今ひとつ気に食わん。さっさと捻り潰した方が早いと思うが？」
「それは最終手段になさってください。少なくとも、現段階でその行為に出ればA外交官の無事は保証されなくなります。…無事でも戻ってこなくなるかもしれません」
「何故そう言える」
「それだけの時間、あの方の補佐をしておりましたから」
神妙な面持ちで俯く男は、今この場において一番彼女の心境を理解していた。
誰が見てもわかる信頼関係に、自然と口を挟む者はいなくなる。
オスマンはやれやれと肩をすくめると、一歩前へ歩み出た。
「ま、せっかくやし乗ろうか。それをあの子が望むなら。グルッペンもトントンも、それでええよな？」
「…俺は、」
「俺はかまへんよ。でも、危なそうになったらこちらも勝手に動きます。よろしいですね？“アステール第二外交官殿”」
語尾を強めたトントンに第二外交官と呼ばれた男は不敵に微笑み返した。
「もちろんです。第一外交官にもそう伝えます」
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
