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カチャリと鳴るのは陶器の音。
ソファーに座るグルッペンはゆっくりと紅茶を含み、向かいに腰掛けるAは彼のカップのあたりを見つめる。
両者言葉を発しない空間はかつてないほどに居心地が悪く、一瞬でも誰か乱入者が来ないかと期待した程だ。
相変わらず現実逃避を繰り返す脳を叱咤して仕事モードに切り替えれば、目前の男は遂にカップを置いて口を開いた。
「…それで、用とは何だ」
『いえ、お先にグルッペン様からどうぞ』
「お前が訪ねてきたんだろう。先に言え」
…何だこの会話は。
かつての外交官としての自分が頭の中で呆れているのがわかった。
考察も読み合いもあったものじゃない、ただ探り探りの牽制と譲り合い。
最近の自分の知性レベルの低下に気づいたAは心の中でひっそりと自嘲して嗤う。
ここまで堕ちていたなんて、これはいよいよ秘書も外交官も失格だ。
トントンの時の勢いや兄さんへ告げた本音が霞となって消え、心の奥に潜んでいた暗闇が顔を出す。
この部屋へきた目的が、いつの間にかすり替わる。
『…今日のチョコはいかがですか？』
「……悪くない。が、お前が最初に持ってきたものの方が美味かった」
『あれは特別製でしたから。ふふ、オスマンさんが次にアステールへ行く際は頼まれるといいですよ』
ピクリと、レンズの奥の瞼が動く。
些細な会話、普通なら特に気に止めることもない、しかしグルッペンは何かが引っかかり、その正体をすぐに突きつけた。
「…いつもなら、お前からオスマンに伝えてくれていたと思ったが」
『そうですね。ですが今後もそれをお許しいただけるのか、わからなくなってまいりましたので』
「…何を、言っている」
『……お休みをいただいていた期間、いろいろと考えたんです。私なりにやれることをやったと思っていましたが、皆様のお考えを聞いてから気がついたことも沢山ありましたし、独りよがりの作戦を展開したと少し反省いたしました。…仲間として多くの方に認めていただいていたこと、大変ありがたく思っております。ですが、だからこそもう一度確認しなければなりません』
グルッペン様、いいえ、総統閣下。
そう呼びかけるAは静かに穏やかに、しかし少し悲哀を滲ませて。
『どれだけ皆様にお許しいただいても、貴方に認められなければ私はここにいることはできません。私は、総統秘書は、これからの貴方にとって必要ですか？今回のことを受けても、まだこんな私を、また以前のようにお側に置かれるおつもりですか？』
複雑な表情を浮かべたまま、目の前の黒に問いかけた。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
