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鬱とは別の意味で何も言わない人間がいる。
彼のように世間話をすることもなく、ゾムのように距離を置くこともない。
どちらかと言えば腫れ物を扱うようなよそよそしさ。
初めから異変には気がついていたが、時間が経てばいつもの態度に戻るだろうと高を括っていた。
しかし戻ってきてかなり日が経つ。
流石に痺れを切らしたAは、謹慎中にも関わらず彼の篭る仕事部屋へ突撃した。
「…入ってどうぞ」
ノックをすればすぐに返ってきた応答。
疲労の滲む声に若干の罪悪感を感じつつ入室すれば、高く積まれた書類の山に囲まれ仕事をする姿。
「ロボロか？こないだのやったらそっちのテーブルに置いといて」
『人違いです』
男は一瞬動きを止め、すぐにバッと顔を上げる。
隈の目立つ両目を丸くしながら眼鏡のズレを直す様子を一瞥し、デスクの端へカップを置いた。
『お疲れ様です。差し入れです』
「えっ、おお…ありがとう…えっ？」
『あ、しんぺい神さんから睡眠薬を預かりましたが、入れてないのでご安心ください』
「あいつAに何渡してんねん！」
反射的に入ったツッコミにAは笑みを浮かべたが、そのまま佇む彼女に相手は困惑の表情を浮かべる。
「…えっと、謹慎期間のことか？」
『いえ、別件で伺いたいことがありまして』
「ええよ。何？」
『現在のトントンさんのお気持ちが知りたいです。…ずっと何かを堪えてらっしゃるようなので』
少し寂しげな苦笑に、レンズの奥の目が開かれ揺れた。
『無理ならいいんです。すみません』
「…いや、不安にさせてすまん。…何も言えんかっただけやねん」
困ったように頭を振ると、また沈黙。
Aが持ってきたコーヒーを煽ると、再度机上へ目を伏せる。
「…心配してた皆の気持ちも、後悔してたシッマ達の気持ちも、…辛そうなグルさんの気持ちも痛い程わかった。でもそれと同じくらい、総統秘書として動いたAの気持ちも理解できるつもりや。Aやって好きで攫われた訳やない。だから誰も責められんし、何も言えんかった。…どう喋ったらええか、わからんかった」
トントンにしては珍しく弱気な声。
勘が良く仲間思いな彼は、その分心労も人一倍だったはずだ。
自分がこの国に来るまでの経緯もわかっているからこそ不用意に言葉にできなかったのだろう。
『ありがとうございます。…貴方が中立を保ってくれて良かった』
「…情けないな、俺」
『先程のお言葉で十分です。でもたまにはまたお茶しましょう？今度は私の愚痴も聞いてください』
そうAが笑いかければ、ようやくトントンも彼女と視線を交わらせた。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
