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まだでしたら、声明の一つくらいは出した方がいいかもしれません。
昼頃、変わらず取り調べを受けていたAが不意に思い出したように呟いた。
怪訝そうな顔をする幹部達は未だその時期ではないと考えているようだが、彼女は困ったように眉を下げる。
『恐らくそろそろ足がつくでしょうし、私を連れてきた彼がこの国に雇われていることも割れている頃でしょう。具体的な要求はともかく、形式的でも公式文書などは提出した方が無難かと』
「何故割れていると言い切れる。第一、割れたからと言って何故こちらから身を明かさねばならない」
『我々の情報班はそれなりに優秀で執念深いですから。これまでも多くの場面でその真面目さが功を奏してきました。もちろん準備を整えてからでも構いませんが、我々が抗議を出すまで待てば即戦争なんてことにもなりかねないので、どうせなら先手を打った方がよろしいのではと思ったまでです』
いえ、個人的な見解なのでお気になさらず。
そう粛々と締めくくる彼女は机上に視線を落とした。
目の前に居た男が部下を呼び寄せる。
小声で話す内容に、聞こえてきたのは知った国の名前。
俯いて更に視線を落とした彼女に男達は顔を見合わせて何事かを頷く。
一連の流れの間、部屋の隅で壁に背を預けて腕を組む男は今日も変わらず、ただただ黙してAを観察し続けていた。
ガチャンと鳴り響く施錠の音。
重苦しい音が響く室内を見渡し、ひとまずその奥の椅子へ腰掛ける。
首を上へ向ければ、遥か高い位置にある明かり取りのためだけの鉄格子の小窓。
しかし簡易的な机と椅子、安物のベッドも備え付けられたこの小部屋は、昨晩の冷たい石壁と床だけの空間よりは随分とましだ。
監視カメラもなく少しよくなった待遇、無人になった空間で一息吐くと、カツカツとブーツの音が響いて近づいてきた。
やがて扉の前で止まったかと思うと、ガチャリと再び鍵が回る。
「…食事だ」
相変わらずくぐもった声で無愛想に声をかける男は片手に持ったトレイを机へ置く。
簡素的なパンとスープに水、それらを落としたり溢したりしないようそっと置くとすぐにその指は離れた。
顔と違いただの布でなく包帯が巻かれていた点は気になったが、Aはそれには触れずに礼を述べる。
「毒は入っていない」
『よかったです。貴方はずっと私の見張りを？』
「それが仕事だ」
『そうですか。それもよかったです』
「…何故だ」
怪訝そうな男にAは一度口を閉ざす。
その意味に気がついた彼が盗聴器なんてこの国にはないと答えれば、彼女は少しだけ満足そうに微笑んだ。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
