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ガタゴトと揺れる馬車の音。
流れる景色と裏腹に流れない空気は、沈黙という名の圧で車内の空間を支配していた。
彼が攻撃を受けるようなことがあれば、私を盾にするよう依頼をしてあります。
正気とは思えない発言をしたAに見せられた手書きの用紙には、彼女の筆跡で確かな記載と拇印の赤。
加えて親指に巻かれた絆創膏が目に入れば、嫌でもその事実が連想された。
これで同時に彼女の護衛もしていると言うのだから矛盾した話だ。
どう宥めても説得してもAの意思は固く、結局最後はシャオロンが折れることとなった。
部下に帰還の指示を出し、隠れていた幹部の一人にはインカム越しに、いいから早く帰れ絶対に手は出すなと怒鳴りつけ、なんとか馬車を用意することに成功した頃にはすっかり疲れきっていた。
三人も居るのに静かすぎる理由は、無口な客と上記によるシャオロンのささやかな反抗心から生まれた空気だったりする。
『シャオロンさん』
「………なに」
『怒ってます？』
「べっつにー。…どうせ俺やったらなんとかなると思ったんやろ。トントンやオスマンじゃこうはいかんもんな」
『違いますよ。シャオロンさんならお一人でも彼と渡り合えると思ったからです。万が一のことがあっても止められる力と、客観的に状況を見極める判断力がありますし。それと…変な邪推等はせずに、ちゃんと私のことを信じてくださると思ったから』
自嘲気味にこぼした笑みに思わずシャオロンは顔を上げる。
無言を貫いていた例の男もチラリと視線だけを寄越した。
『私は自分の判断は間違っていなかったと信じています。できることは全てやりました。ですが今回は賭けに等しかった場面が何度もあった。いろんな人を巻き込んだ。私一人の稚拙な計画とわがままで、多くの国を窮地に陥れるかもしれなかった』
彼女は感慨深そうに少し目を細める。
胸元に手を当て、自らを落ち着かせるように呼吸を整えた。
『…それでも、皆さん信じてくれた。協力してくれた。何も無駄にならなかった。…私が信用した人達は、本当に信頼できる人達だった。彼もそれに一躍買ってくれた一人なんです。だから、もしもまだ私に居場所があるのなら、もう一度私を信じてほしかった。私も皆さんを信じたかった。それだけです』
僅かに微笑むと、シャオロンはバツが悪そうに下を向く。
「…ごめん。…信じるに決まっとるやろ」
『ありがとうございます』
「…ああもう！面倒やからこの際二人まとめて守ったるわ！」
『それは頼もしいですね』
ヤケになって叫んだ彼に、男は静かに瞼を閉じた。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
