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緩やかに吹く風、じんわりと照らす太陽。
見晴らしのいい静かな平地をシャオロンは一人ゆったりと歩いていた。
手紙が届いてから三日、約束の日時に指定の場所へと向かう。
かれこれ二週間は会っていない彼女、少し遠目に人影を発見すれば思わず小走りにもなる。
「A！…っ！」
名を呼んで、すぐに気づいて足を止めた。
目的の人物は少しやつれた顔をしながらも微笑みを浮かべたが、その後ろに男が一人立っている。
口元を布で覆い隠す怪しげな風貌は、鬱とロボロから見せられた監視カメラの映像に一瞬だけ映っていた姿。
今回の侵入者であり、Aを攫った張本人。
反射的に武器を構えるシャオロンを、男は微動だにせず冷たく見つめた。
『シャオロンさん、お久しぶりです。ご足労いただきありがとうございます』
「おん、全然ええよ。無事でよかった。でもそいつから離れてくれん？」
『できません』
「何で？庇っとんの？あー、なんやったっけ、なんとか症候群？」
『ストックホルム症候群ですか？』
「そうそれ。…情でも沸いたん。グルッペンボコってA攫った奴に？」
『その煽りも久々に聞きました。沸いていないと言えば嘘になるかもしれませんが、どちらかと言えば彼と私は契約関係にあるので』
Aが少し強調して言えば、シャオロンは構えは解かずに僅かに首を傾げた。
敵と契約なんて何を言っているんだ、とでも言いたげな表情である。
『攫うのも行動を黙視したのもあの国から逃がして今日まで護衛をしたのも、全て私の依頼および指示です』
「…おい」
『口出しは無用です。という訳で、私は依頼料を支払わなければなりません。しかし手持ちがありません。ですので、彼を連れて城に戻りたいと思います』
「えっ、いやちょお待って？そんなんええっていう訳、」
『シャオロンさん』
「え？あ、何？」
『何人でこちらに来ましたか』
脈絡なく投げかけられた問い。
しかし彼はピクリと肩を動かす。
「…一人やけど」
『そうですか。…どう思います？』
「遠いが気配は複数感じる。…一人手練れがいるな」
『部下の方々と、…ゾムさんあたりでしょうか。なるべく遮蔽物のない場所にしたのですが』
ふうと息を吐き、女はもう一度シャオロンを見据える。
『約束、破りましたね』
「っ、ちゃう！俺一人で来た！ほんまや！だから、帰ってきて…頼むから」
『…ありがとうございます。ああ、怒ってはいませんよ』
「え…？」
『でも、お詫びに私のわがままも聞いてくれますよね？』
にこりと笑う彼女の圧に押され、つうと冷や汗が背中を伝った。
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華凛(プロフ) - 1番最初から読んできましたが、このパートの78話目のgrさんのセリフに思わず胸がきゅんとしました。お体に気をつけて更新してください。楽しみにしてます。 (2019年7月4日 13時) (
レス) id: 1c6f67374d (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - マロウブルーさん» コメントありがとうございます。長いお話ですが気に入っていただけて嬉しいです！まだまだ続きますが、よければ今後もお付き合いいただければ幸いです！ (2018年11月18日 16時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
マロウブルー - あぁ…何で綺麗で壮大で素晴らしい話なんでしょうか…あなたが神か…そうか…！いやもう、ずっと憧れです！追い付きたいと思うことすらおこがまし(殴)本当にこの話大好きです！影ながら応援しております…！ (2018年11月17日 23時) (レス) id: 75a1a6830c (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - この話が面白いのでシャオロンのファン辞めますさん» コメントありがとうございます。生きがいとまで言っていただけて恐縮です…！更新遅くて申し訳ないですが、今後とも楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2018年9月15日 20時) (レス) id: bb8b65fc2e (このIDを非表示/違反報告)
この話が面白いのでシャオロンのファン辞めます - 毎回楽しく読ませてもらっております。ぎすメモとともに私の生きがいです。無理せず毎秒投稿してください！(ネタです。すみません。健康に気をつけてください！更新待ってます！) (2018年9月15日 20時) (レス) id: 8c4421707f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：璃亜
| 作成日時：2017年12月1日 22時
