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ゾムが一枚目の皿を空にしたところで、こちらに歩み寄る人影が視界の端に映る。
気づいた順に男達が顔を向けると、いつも通りの様子のAと先程と変わらない笑みを浮かべた外務大臣が戻ってきていた。
「…早かったですね」
「ええ。話したい内容は双方同じことだったので、おかげさまですぐに済みました」
にこにこと微笑み合う我々の外交官とリズの外務大臣はお互い腹に何を抱えているのか。
間に挟まれた第二外交官の顔が引き攣る中、Aはまずはグルッペンに頭を下げた。
『ありがとうございました』
「…オスマンが勝手に許可したことだがな」
『ですが恐らくこの後も似たようなことは起きると思いますので、ご承知ください』
「む…」
実際グラシエルはアステールの隣国であり、Aの顔見知りも多く来ている。
となればリズに限らずこういった事態が起こり得るのは少し考えればわかることだった。
悪びれもなく言う彼女はすっかりいつも通りの冷静さを取り戻しており、グルッペンも仕方なく返事代わりのため息を吐く。
「では私はそろそろこの辺りで失礼するとしましょう。A秘書官、勝手にその辺で死んだりしないようにね」
「お前…っ!」
『相変わらずの外務大臣節、しかと受け取りました。できる限り努力いたします』
「そこは“約束”してくれないのかい?」
『貴方様とのお約束程確かで怖いものはないので』
ゾムを押さえて笑顔で返すAに外務大臣は満足そうに微笑むと、離れた位置で待っていた自分の部下の元へ歩いていく。
それを見送ってから彼女は押さえていたゾムを静かに見上げた。
『あの方はああいう物言いを好む方なので、気にしないで大丈夫ですよ』
「はあ?何なんそれ。失礼ちゃう?」
『逆に嫌味も厳しい言葉も何も出ない時の方が危険です。ああ言ってくださる内はまだ信頼してそれなりに認めてくださっている証なので』
何でもないことのように言うAに第二外交官と補佐官も頷く。
なるほどそういうタイプか…と一人分析し始めたオスマンを見て、ゾムは心底面倒そうな顔を浮かべた。
「…俺には絶対外交官は無理やな」
『よく言いますよ。やろうと思ってないでしょうに』
ため息を吐くAに当たり前やんと返す彼は、既に二枚目の皿に手をつけ始めていた。
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ミリオ - 小説読ませていただいてます!いやもう読む手が止まらないくらい、面白いです。グル氏の少し子供っぽいところがツボで、来るたんびに部屋で一人で「キャー!!」って言ってますw私は読むことしかできませんが、これからも頑張ってください! (2020年3月23日 2時) (レス) id: 5e8093b1cc (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 豆粒さん» コメントありがとうございます。わかりやすいですか…!?嬉しいです!更新遅くて申し訳ないですが、またいらしていただけると嬉しいです。 (2017年11月27日 8時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
豆粒 - はじめまして!内容が濃くて続きが気になってしまいます(*´∀`*)あと その場の状況がわかりやすい詳しい文にとても惹き付けられちゃいます、更新お疲れさまですっ (2017年11月26日 20時) (レス) id: 6ecce97bae (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - RIARUさん» コメントありがとうございます。面白いと思っていただけて嬉しいです!いえいえ、私の話は参考にできるほどではないので…。ゼロからオリジナルで書かれた方がもっと面白いお話ができるかと思います。 (2017年11月21日 12時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
RIARU(プロフ) - 作品読ませていただいてます!とても面白いです。私も小説を書いてるんですが参考にしてもよろしいでしょうか?失礼だったらすみません。 (2017年11月19日 21時) (レス) id: 88c227d681 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年7月7日 23時