34 ページ34
頬にかかる髪を耳へかき上げ、Aは再度皇太子の方を向く。
未だ緊張の面持ちが残るその顔を安心させるように、しかし明らかに彼とは違う大人の顔で微笑んだ。
『…光栄なお言葉、ありがとうございます。私のような女性は特段珍しくもないですから、きっと皇太子様ならすぐに見つけることができますよ』
変わらない笑顔で微笑むAに皇太子の眉が少しだけ下がる。
微かに唇を噛んで迷う素振りを見せたが、内に秘めた想いを更に言葉にしようと一歩前へ歩み出た。
しかし、
「…お話中失礼、こちらに私の秘書がお邪魔していると聞いたのだが」
バルコニーの入り口に佇む男はよく響くバリトンボイスでこの静かな空間に割って入ってきた。
弾かれたように肩を跳ね上げた皇太子とは対照的に、Aは少しだけ呆れた表情で男の方を向く。
『…何か御用ですか、“総統閣下”』
「……そうだ。先程話していた国について聞きたいことがある」
『お急ぎではなさそうなので後にしていただいても？今は皇太子様とお話中です』
バッサリ断ったAの返事はグルッペンの眉間の皺を更に深くした。
漏れ出る威圧感と不機嫌そうなオーラに萎縮する皇太子に気がついたのか、Aはグルッペンの視線を遮るように皇太子の前に立ってヒソヒソと彼に囁く。
『申し訳ございません、皇太子様。総統があのような状態のままパーティーに参加させていただくのは失礼ですから、宥める為に席を外してもよろしいですか？』
「えっ…はい…」
『総統に代わって無礼をお詫びいたします。また今度機会のある時にゆっくりお話いたしましょう』
にこりと微笑みかけると皇太子は残念そうながらも辛うじて頷く。
そのまま二人に就寝の挨拶を述べると、自身の父母の居る華やかな空間へと先に戻っていった。
「…玉の輿か？」
『はい？…聞いてらしたんですか？』
見上げたグルッペンの顔は月光を背に浴びているせいか影になってしまってよく見えない。
しかし声色から未だ機嫌の良くなさそうな雰囲気を感じとったAは問いかけに対する答えを聞く前にため息を吐いた。
『ありえませんよ』
「何故言いきれる。向こうはその気だったようだが？」
『歳が離れすぎてます。恐らく思春期によくある歳上の異性に対する憧れのようなものでしょうし』
「…お前の口からそういう話題が出るのは意外だな」
『貴方が振ってきた話題でしょう』
面倒そうな表情を浮かべると、Aも再び華やかな空間へと足を戻した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1792人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ミリオ - 小説読ませていただいてます！いやもう読む手が止まらないくらい、面白いです。グル氏の少し子供っぽいところがツボで、来るたんびに部屋で一人で「キャー！！」って言ってますw私は読むことしかできませんが、これからも頑張ってください！ (2020年3月23日 2時) (
レス) id: 5e8093b1cc (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 豆粒さん» コメントありがとうございます。わかりやすいですか…！？嬉しいです！更新遅くて申し訳ないですが、またいらしていただけると嬉しいです。 (2017年11月27日 8時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
豆粒 - はじめまして!内容が濃くて続きが気になってしまいます(*´∀`*)あと その場の状況がわかりやすい詳しい文にとても惹き付けられちゃいます、更新お疲れさまですっ (2017年11月26日 20時) (レス) id: 6ecce97bae (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - RIARUさん» コメントありがとうございます。面白いと思っていただけて嬉しいです！いえいえ、私の話は参考にできるほどではないので…。ゼロからオリジナルで書かれた方がもっと面白いお話ができるかと思います。 (2017年11月21日 12時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
RIARU(プロフ) - 作品読ませていただいてます！とても面白いです。私も小説を書いてるんですが参考にしてもよろしいでしょうか？失礼だったらすみません。 (2017年11月19日 21時) (レス) id: 88c227d681 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃亜
| 作成日時：2017年7月7日 23時
