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「何故だ、理由を聞かせてくれ」

少し驚いた様子で聞くグルッペンにAは考えるように視線を斜め上へ逸らす。
そうですね、いろいろありますが、と前置きし、静かに凪いだ目を再び彼らに向けた。


『私はこの国の外交官として顔と名前を売りすぎました。今も励ましやお誘いのお手紙を送って下さる方々がいるくらいには。例え退官しても私はアステールの元外交官なのです。今更他国の外交官をやれる程図太くありませんし、この国の信用にも関わります。そもそもオスマンさんというとても優秀な方がいるのですから私の出る幕はありません』

平坦な口調でAの話は続く。

『何もする気が起きないのも事実です。やる気のない人間を連れていくメリットはないでしょう。やる気があったらそれはそれで問題がありますが』
「何だ、その問題とは」
『私は元来生意気で、そんなに聞き分けのいい人間ではありません。そもそも我々国とは目指していたものが違いますから、絶対に皆さんの、何よりグルッペン様の方針に口を出してしまう。既に出来上がった組織に波紋を投じる新入りなど厄介なだけです。…それに、……』
「それに?」
『…総統閣下に忠誠を誓えない人間など必要ないでしょう?』

悲しげに微笑むAに二人は息を飲む。
いち早く復活したトントンが何とか口を開いたが、

「Aさん、確かにさっきのは失言でしたが、この人もそれなりに頼りになる人で、」
『存じております。ですが、トントンさんは総統閣下が亡くなったからこちらへ来いと他国から誘われたら行かれるのですか?』
「………いいえ」
『そういうことです』

すぐに再び口を閉ざした。
グルッペンは険しい表情でAを見つめる。


「…そんなにエーデル大佐は優れていたのか」
『ええ、とても。素直に本人へ伝えたことはありませんが、私には唯一無二の上司でした』
「……俺よりもか」
『さあ、どうでしょう。それは人によるかと思いますが』

肯定はしなかったが否定もしなかったAにグルッペンは更に顔を歪める。


「…お前がそうやって過去に囚われているのを彼は望まないと思うが?」
『…それを言っていいのは貴方ではありませんよ。大佐のことをご存知ない方が大佐を語るのは聞いていて不愉快ですね』

冷えきった視線でこちらを見るAにトントンは内心で頭を抱える。
やってしまった、確実に地雷を踏んだ。
心を閉ざしてしまった様子の彼女にはその後どんな言葉も響かなかった。

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はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます! (2019年5月10日 23時) (レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです!ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ! (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…!?まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…!お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:璃亜 | 作成日時:2017年5月24日 22時

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