73 ページ23
エーデルが亡くなってからは、今まで以上に仕事に打ち込むAの姿があった。
彼の分の仕事も下りてきて業務量が増えているというのも原因の一つだったが、それ以前に何かしていないとエーデルのことばかり考えてしまう。
ろくに休まずに仕事ばかりしているAを見て部下は心配そうに声をかける。
「A外交官、少し休憩されては…」
『ありがとう、判断力が鈍ったらそうする。ごめん誰かコーヒーもらえる？ブラックで』
「私もその書類引き受けます」
『大丈夫、会談できない以上これくらいしかできないから。手空いてるなら第二外交官の方手伝ってあげて』
侵入者の持ち物からAのことが書かれた紙が見つかった。
彼は元々Aを狙ってきたとわかった上層部は彼女に他国の者との面会を一切禁じた。
そのおかげでまともに外交に赴けなくなったAは、各国からの手紙と山のような書類と共に執務室に引きこもることになった。
当然そのしわ寄せは第二外交官にいき、Aが行くはずだった外交にも彼が駆り出される羽目になった。
少しでも彼の負担が軽くなるようにと事前に各国へ状況を知らせて詫びておいたが、それでも辛いものがあるだろう。
『補佐官、上は何て？』
「まだ何とも。…ただシャスティアに抗議の手紙を送ったことは確かなようです。戦争になるという噂もあります」
『…そう。もうこっちを通してもらえないのか。…根回しだけしとこうかな』
そう呟いて新しい便箋を取り出すと手紙を書き始める。
個人的に送る物に使うその便箋を見て補佐官は一通の手紙を差し出した。
「その前にこちらを。先程届きました。我々からです」
『…嫌な予感がする』
「…私もです」
そのに週間後、シャスティアは再び敗戦した。
アステールが宣戦布告してからすぐに宣戦布告をした我々の軍によって上層部は壊滅状態になったと聞いた。
エーデルの敵討ちは完遂したのだろうが、特に嬉しいとは思わなかった。
チラリと机の端の手紙に目をやり、すぐに視界から外して再び仕事に向き直る。
どうやら奴らは君のせいで我々と手を組めず戦争に負けたと考えたらしい。
逆恨みにも程がある。
そんな稚拙な推測で友好国が傷ついたのは我々としても非常に遺憾だ。
そうではないと私直々に教えてやる。
戦争予告を個人的に送ってくるなんてどうかしている。
そして同時にどうせならもう少し優しい言葉をかけてくれればいいのに、なんて非難じみたやつあたりをしたくなった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1430人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
はろ - 初コメ失礼します。今日初めてこの小説を見つけ一気に読んでしまいました。素敵な作品をありがとうございます！ (2019年5月10日 23時) (
レス) id: 04eaede967 (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - あ、あの、エーデルが死ぬと思ってなくて思わず涙が……(T ^ T)作品好きです！ま、まさかのおおおおってなっておりますっっ！ (2019年4月26日 17時) (レス) id: 0dc2b364d7 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - フーさんさん» コメントありがとうございます。ボキャブラリー広いですか…！？まだまだ勉強不足な面もありますが、そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます。続編もあるのでよかったらご覧になってみてください。 (2018年3月14日 21時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
フーさん - 主様のボキャブラリー広すぎるぅううう… (2018年3月14日 13時) (レス) id: c25a3a0724 (このIDを非表示/違反報告)
璃亜(プロフ) - 遊馬さん» コメントありがとうございます。まだまだ拙いですが、お褒めのお言葉とても嬉しいです…！お気遣いありがとうございます。次作もどうぞよろしくお願いします。 (2017年7月7日 14時) (レス) id: 97b5822f0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃亜
| 作成日時：2017年5月24日 22時
