【wrwrd!】とある社畜外交官の憂鬱

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それからしばらくの間、Aは今まで以上に外交に力を入れていた。
目まぐるしく国際情勢が変化した為、国としての対応を迫られる前にあらゆる手を打つべく各国へと駆けずり回った。
結果いくつもの成果を上げ、それを妬まれ嫌がらせの仕事がまた増え、書類の量と睡眠時間は恐ろしいことになるという悪循環だったが、それでもやめる訳にはいかなかった。
手を止めて戦争への道を歩むことは避けたかった。

我々との会談も何度も行い、いくつか条約も結ぶことができた。
毎度のように彼らの元へ訪問することになったが、その分幹部達と話す機会も増えていた。
Aの目指す不可侵条約の締結への道も見えてきた、はずだった。





「会談中失礼します！シャスティア国がマレーネ国に宣戦布告した模様！既に軍が展開しており、南西の平地には兵が配備されているようです！」

突如もたらされた知らせ、できれば自国で聞きたかった。
本日も我々国を訪れていたAは、グルッペンとオスマンと行っていた会談という名の茶会を丁度締めくくろうとしていた所で、最悪のタイミングの情報に眉間に皺を寄せる。

マレーネはAの自国アステールから近い位置にあり、ここから南東のシャスティアと近頃不穏な空気になっていたが、それでもこの宣戦布告は突然すぎた。
加えて南西の平地は馬車で自国へ戻る際に通るルート。
そして電撃的にシャスティアがマレーネまで攻め込めば自国の付近でも戦闘が行われることになる。

それは、今我々国を出ると戦争に巻き込まれる可能性が極めて高いことを示唆していた。


「…A、何日かここに留まるといい。我々が保護するという扱いにすれば問題ないだろう」
『そういう訳には…私一人ではなく部下もいますし』
「でも今は危ないで。戦局が落ち着くまで動かん方がええよ」
『ありがたいですが、マレーネが私共に助けを求めたらどうなりますか。…シャスティアが貴方方に参戦を要求したら、どうなりますか』

もしそうなれば事実上両国は対立することになる。
保護が捕虜に変わってしまう可能性があった。


『私は、アステールの第一外交官です。何かあった時、対応を求められるのは私です。ですか、ら…っ』

立ち上がったAの視界が不意にぐらつく。
頭が歪み、身体がふらつく。
それでも力を振り絞ったが、数歩歩いたところでその身体はゆっくりと崩れ落ちていく。

意識を失う前に聞いたのは部下の悲痛な声、そしてグルッペンの自分を呼ぶ叫び声だった。

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