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『転校前最後だし、挨拶をしていない方達に挨拶を済ませてくるから遅くなる』
世間体を気にする母にそう口実を作り、今日という日は遅くまで学園に残っていた。
場所はいつもの音楽室。座っているのは、いつものピアノ椅子。
ガコン、と鍵盤蓋を開け、ワインレッドのキーカバーを外せば、見慣れた美しい白と黒の鍵盤が姿を表す。
(もう……これに触れられるのも最後なんだ)
鍵盤に指を掛けると、自分の好きな曲を弾き始める。
こうやって、自分の意思で”弾きたい”と思って弾けるのも、最後になるから。
『……Aちゃん』
『Aさん！』
『A先輩』
『Aちゃん！』
_______________私の中の輝かしい思い出達。
どうかずっと、私の中で光を失わずに生きていて。
これから先、どんなに辛い事があっても、それを思い出せば乗り越えられる気がするから。
「Aちゃん」
……今のは幻聴？
今、確かに日和くんの声が聞こえた気がする。
一度、弾く手を止めてドアの方を振り向いた。
(幻聴じゃない……)
そこには、確かに日和くんが立っていた。
彼は、ゆっくりとこちらに近付いてくる。
「懐かしいね。今弾いてたのって、ぼく達が小さい頃に一緒に作った曲だね」
「意外。日和くん、古いものは嫌いでしょ」
「Aちゃんとの思い出だけは、ずっと新しい記憶のままだね」
優しい微笑みを浮かべ、彼は私の座っているピアノ椅子に無理矢理詰めて座ってきた。
当然、狭いのは当たり前だった。
「あははっ、狭いね」
「昔みたいに小さくないんだから当たり前でしょ」
「……ねぇAちゃん。今のもう一度、最初から弾いてほしいね。昔みたいに、Aちゃんの伴奏で歌いたいね」
きっと、これは彼なりの最後の足掻きのようなものなのだろう。
彼ももう、夢を見る子供じゃないから。
なら、私も_______________
「音外したら許さないから」
「ふふん。アイドルのぼくが、そんなことするはずがないね！」
_______________今だけは、彼の隣で弾かせてください。
『ひよりくん！できたね、わたしたちのきょく！』
『うん！これは、ぼくたちのたからものだね！』
宝物のように大切な、あの頃のように____________
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リア(プロフ) - 最高に面白いです！日和が可愛すぎる！！！更新楽しみに待っています(^^) (2020年1月24日 17時) (
レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 凄く私好きな話だと思います！滅茶苦茶好きになりました！！更新待ってます。頑張ってください！！ (2020年1月23日 6時) (レス) id: 1d868b34d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：水神友花 | 作成日時：2020年1月19日 12時
