再来… 8 (和) ページ4
翔Side
俺も智にぃも、とっさに動くことも声を出すことも出来なかった。
驚きと衝撃で一瞬全身が固まったのちに、硬直の魔法が解けたかのように身体がビクッと動き出す。
翔「かっ…！」
智「大丈夫だよ、和。
一回ソファに戻ろうか、よい…しょ」
反射的に出かかっていた俺の叫びは、いつもと変わらない智にぃの声によって喉の奥に押し戻された。
吐瀉物を見つめながら動揺したように呼吸を早める和を、智にぃがゆっくり慎重に持ち上げてソファに座らせている。
智「苦しかった？びっくりしたね。
大丈夫だから、力抜いて楽にしよう」
震えるように身体に力を入れている和の肩を抱く智にぃは、あくまでも冷静さを崩さない。
その声を聞きながら俺も一度深呼吸をして、乱れ気味の気持ちをリセットした。
智「それ、まだ拭かないでおいて？あとでよく見ておきたい」
翔「ん、了解」
和の口元を拭いてやったタオルには、唾液で薄まった赤い血が付着している。
それよりもっと濃い色が広がる目の前の床に、洗面器をかぶせて蓋をした。
量はそれほど多くはないにしても、誰がどうみても明らかな鮮血。
俺だって驚いたんだ…いきなりのことに和が怯えるのも無理はない。
酩酊状態の和が自分の身体に起きたことをどれだけ理解しているのかはわからないけど、今までほとんど閉じられていた目が不安そうに泳いでいるのを見ると、一時的にでも酔いを覚ましてしまうほどの衝撃があったんだろうな。
智「もしまた気持ち悪くなってきたら教えてね。
慌てないでいいよ、和。僕いるから。落ち着いて」
いきなりのことで少し動揺してしまったけど、状況から考えて原因の推察はできている。
和のバイタルに問題がなく、再び大量に吐血するようなことがなければ、緊急に治療が必要な事態にはならないだろう。
.
翔「この色は、食道かねぇ…」
智「んー…僕も状況的にはそれかなって思うけど…」
どれだけ届いているかわからなくとも、嘔吐によって食道が傷つき出血した可能性があることと、明日の朝になったら検査をしようということを和にしっかり伝えて、頷いたのを確認してから寝かしつけた。
二人で床に残しておいたものをタオルで拭き取って片付けながら、何度目であっても家族が血を吐く姿を見ると肝を冷やすな…と苦く笑い合う。
智「今夜は僕が和の隣で寝るから」
ありがとう、こんなにも頼もしいことはないよ。
あとは何事もなく朝を迎えられるようにと、願うばかりだ。
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ちさ(プロフ) - 琴子さん» こんばんは琴子さん♪ いえいえ！お忙しいなか温かいコメントを、本当にいつもありがとうございます。夏のような暑さになったかと思えばここ数日は冷たい雨…体がおかしくなってしまいそうです。今回から新Partに移行しましたので、あちらでもよろしくお願いいたします (2019年6月8日 23時) (
レス) id: 2f0afe0567 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 朝早くにすみません。ご無沙汰しています。メッセージ最近は特に送れずすみません…m(_ _)m 雨の季節になりましたね。今夜の更新を楽しみにしています♪♪♪ (2019年6月8日 7時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 翔さんさん» こんばんは、翔さんさん。今回は小児科医和先生の温かさが出せたら良いなと思って書いていましたので、そのように言っていただけてとても嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました！ (2019年5月4日 21時) (レス) id: 2029d5744d (このIDを非表示/違反報告)
翔さん - 和にぃの優しさが伝わってきました＾＾令和最初に良い話が読めました！ (2019年5月3日 8時) (レス) id: 4771dff308 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - rabbitさん» こんばんは、rabbitさん。やっとですね〜。一度甘えられれば、この後はずーっと和にぃにベッタリだと思います(笑) ニマニマして読んだ、は最高の褒め言葉です、ありがとうございます！次回もまた楽しんでいただけたら嬉しいです (2019年5月2日 19時) (レス) id: 2029d5744d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちさ
| 作成日時：2019年2月10日 22時
