桜の涙 14 (潤) ページ29
松岡Side
翔が話しだしたのを見て、一度部屋の外に出て待機をする。
病室にくる前、担当医と看護師に潤の様子を聞きに行ってきた。
とても静かだと言っていたよ。
『痛い』も『辛い』も、自分からは何一つ発さない、と。
あれからトイレにも一度も行っていないという。
転倒したときに捻った足首は骨に異常はないものの、包帯でがっちり固定されている。
痛みでまともに足もつけない状態の潤が、一人で歩いてトイレに行ったとは考えにくい。
松「お、どうだった？」
翔「うーん、予想通りというか…まいりましたね…」
壁に寄りかかり腕を組んで待つ俺の前に、小さくため息をついた翔が顔を出した。
中で話していたのは、『手を借りることは辛いか？』ということ。
もちろんそんな聞き方はしていないだろうし、責めるつもりで言ったわけでもない。
翔「トイレに行きたいからって、それだけのことで助けを呼ぶのは申し訳ないと…」
松「潤が自分で言ったのか？」
やはり昼間の失禁が相当こたえているのか…
もう同じことにはなりたくないと、思っているはずなのだが…
それでもギリギリまで耐えてしまうということは、俺らに面倒をかけたくないという思いの方が強いんだろう。
気遣いが過ぎるからな…潤は。
まあそれは、『お馴染み』といえばそうなのだが。
翔「スッキリした？頭痛いよな、すぐにベッドに戻ろう。座れる？」
智「ゆっくりでいいよ〜、僕につかまって？足気をつけてね」
再び病室に戻ると、ちょうどトイレのドアが開いたところ。
翔が潤を車椅子に乗せ、智が点滴のスタンドを押してベッドまで戻る。
潤のことだ…家族の手を借りることすら、申し訳ないと思っているんだろうな。
それでも兄貴を前に、わずかにだが本音を言えたことは救いだ。
翔や智に対しては甘えてもいいと自分に許している、と…
抑え込む気持ちにほんの少しでも抜け道があれば…と、俺は願いたい。
そうでなければ、これから少なくとも数日間、大きなストレスを抱え込むだけの心身が持ちそうにない。
翔「痛い？…寒くはない？大丈夫？」
智「今が一番つらいときかな…だんだん良くなってくるからね」
ベッド上で声をかけられる潤は、今日俺が見た何時どんなときよりも表情がいい。
痛みに顔が歪んではいるが…それでも目つきが全く違う。
松「さて、と」
そろそろ、兄弟水入らずにしてやろうか。
潤にとって、今が少しでも解放的な時間であるように…
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ちさ(プロフ) - 琴子さん» こんばんは琴子さん♪ いえいえ！お忙しいなか温かいコメントを、本当にいつもありがとうございます。夏のような暑さになったかと思えばここ数日は冷たい雨…体がおかしくなってしまいそうです。今回から新Partに移行しましたので、あちらでもよろしくお願いいたします (2019年6月8日 23時) (
レス) id: 2f0afe0567 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 朝早くにすみません。ご無沙汰しています。メッセージ最近は特に送れずすみません…m(_ _)m 雨の季節になりましたね。今夜の更新を楽しみにしています♪♪♪ (2019年6月8日 7時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 翔さんさん» こんばんは、翔さんさん。今回は小児科医和先生の温かさが出せたら良いなと思って書いていましたので、そのように言っていただけてとても嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました！ (2019年5月4日 21時) (レス) id: 2029d5744d (このIDを非表示/違反報告)
翔さん - 和にぃの優しさが伝わってきました＾＾令和最初に良い話が読めました！ (2019年5月3日 8時) (レス) id: 4771dff308 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - rabbitさん» こんばんは、rabbitさん。やっとですね〜。一度甘えられれば、この後はずーっと和にぃにベッタリだと思います(笑) ニマニマして読んだ、は最高の褒め言葉です、ありがとうございます！次回もまた楽しんでいただけたら嬉しいです (2019年5月2日 19時) (レス) id: 2029d5744d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちさ
| 作成日時：2019年2月10日 22時
