再来… 18 (和) ページ14
智Side
嘘だ…って、信じたくないって思った。
でも和の口から出てくる言葉の数々に、現実なんだって受け入れるしかなくて…
戸惑いも、悔しさも、悲しさも、色んな感情が混ざって渦巻いている。
翔「そんなすぐに嘘とバレるようなことを…
…ハァ…どうして懲りないかなぁ」
和「んっ…ごめっ…」
何度もごめんなさいって言いながら、声を震わせて言葉を絞り出す和に、僕の後悔も強くなる。
それでも、僕までここで謝ってしまえば、和が余計に辛くなるだけだから。
自分のせいで僕を苦しめたと、思ってほしくないんだ。
智「謝らなくて大丈夫。和を責めているわけではないんだよ」
こんなことになったのは、和が診断のミスをしたからだ…と。
兆候があったはずなのに、検査を怠ってそれを見逃したんだ…って。
その責任にと要求されたのが、莫大な示談金だった。
和「…でもっ…わたさなっ…と…」
智「渡さないと…？」
おそらく、髄膜炎になった事実も、容態が急変した事実もない。
どこの病院に入院したのか何度も確認をする和に、頑なに答えようとしなかったのはそのためだろう。
しかも和は、昏睡状態であるはずのその子を、街で見かけたって言っているんだ。
この偶然があってよかった…和が院長の主張を疑うきっかけになった。
正式な確認が取れるまで、執拗な要求に負けずに立ち向かい続けた和は立派だったよ。
智「そんなことまで言われたの…
辛い時に…よく我慢したね」
食中毒で寝込んでいる間も、和はずっと悩み続けていた。
高熱と激痛に魘され、連絡が取れないのもやむを得ない状態だったのに。
誠意がないと怒った相手は金額を吊り上げ、払えなければ裁判を起こすとまで言ってきて…
それでは僕に迷惑がかかると、それが一番苦しかったみたいなんだ。
誰にも相談できず一人で抱え込むことがどれだけ辛いことか…
それを知っているからこそ、悔しくてたまらない。
翔「俺が息子に連絡してみるよ。
こんなことになっているとは知らないと思うから」
おそらく院長が単独でしていること。
これで事実がわかるはず…
そう思っていたところで、僕の腕を握ってきた和が瞳を揺らしながら震えた声を発した。
和「もしかしてっ…」
『以前被害にあったのは…』
『同じように脅されてたのはまさか…』
これまでの僕らの会話から、気づいてしまったんだ。
動揺する和の呼吸が乱れてくる。
その苦しそうな息遣いに、僕の呼吸も速くなっていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1834人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちさ(プロフ) - 琴子さん» こんばんは琴子さん♪ いえいえ！お忙しいなか温かいコメントを、本当にいつもありがとうございます。夏のような暑さになったかと思えばここ数日は冷たい雨…体がおかしくなってしまいそうです。今回から新Partに移行しましたので、あちらでもよろしくお願いいたします (2019年6月8日 23時) (
レス) id: 2f0afe0567 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 朝早くにすみません。ご無沙汰しています。メッセージ最近は特に送れずすみません…m(_ _)m 雨の季節になりましたね。今夜の更新を楽しみにしています♪♪♪ (2019年6月8日 7時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - 翔さんさん» こんばんは、翔さんさん。今回は小児科医和先生の温かさが出せたら良いなと思って書いていましたので、そのように言っていただけてとても嬉しいです。最後まで読んでいただきありがとうございました！ (2019年5月4日 21時) (レス) id: 2029d5744d (このIDを非表示/違反報告)
翔さん - 和にぃの優しさが伝わってきました＾＾令和最初に良い話が読めました！ (2019年5月3日 8時) (レス) id: 4771dff308 (このIDを非表示/違反報告)
ちさ(プロフ) - rabbitさん» こんばんは、rabbitさん。やっとですね〜。一度甘えられれば、この後はずーっと和にぃにベッタリだと思います(笑) ニマニマして読んだ、は最高の褒め言葉です、ありがとうございます！次回もまた楽しんでいただけたら嬉しいです (2019年5月2日 19時) (レス) id: 2029d5744d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちさ
| 作成日時：2019年2月10日 22時
