【実ｼ兄者】【ky】触覚は生きている (ページ9)

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心と目線ページ9

-hira-

キヨが走り去って行った。

「俺らはゆっくり行こうぜ」

「だな」

「だねー」

こーすけの言葉に、フジと俺で賛成。

「目、腫れてたな」

「昨日いっぱい泣いたんだね、キヨ」

こーすけとフジが話している横で、俺は会話を聞いている。

多分、北川さんの目も腫れてるよ＿＿

確証はないし、なんでそう思うかって言われたら、なんとなく。

俺は毎日自分の隅っこの席から、キヨと北川さん、その後ろのフジと蒲田ユキさんを観察していた。

「またみてんの？」

「うん今日の対象はね、キヨと北川さん」

俺の前の席にいるこーすけは、そんなに面白い？と不思議そうに俺を見る。

「面白いよ、人間観察」

「お前、昔から好きだよなあ」

キヨが、北川さんの手を握る

北川さんも、少し握り返す

二人の間で、何かが通じあっている。

それを、蒲田さんは

睨んでいる

「うわー、蒲田さん、顔こわぁーい」

棒読みで声に出してみる。

ぼーっとしていたフジが、俺のほうを見る。「ユキちゃんが？」と目線を送ってきたから、「そうだよ」と頷く。

フジが蒲田さんを見て、一瞬固まったあと、蒲田さんの肩をトントンと叩く。

人をそんな目で見るんじゃないよって。

嫉妬は良くないよって、思ってるのがわかる。

人間観察って面白い。

次の観察対象は、蒲田さんかな。