【実ｼ兄者】【ky】触覚は生きている (ページ31)

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大好きページ31

-kiyo-

Aは、フジの部屋をぐるりと見渡した。

俺は魂が抜けたフジをベッドに横たわらせると、そこら辺にあった椅子にAを座らせた。

「フジさんって…なんか独特な人だね」

「まぁな…怖くないか？」

Aは俺の彼女になった。『付き合おう』と言葉にはしなかったけれど、言葉にならない感情は抱き合えば伝わった。

それでもAの男性恐怖症は治らなかった。噂によると、元カレに暴力を振られてから、若い男の顔が見えないらしい。

「怖くないよ…キヨくんの友達だから」

ふふ、と微笑んだAの顔が可愛くて、頭をぽんっと撫でた。

「あのね、私さ…」

唐突に話し出した。

「私さ、まだ、キヨくんの顔、わかんない」

途切れ途切れに喋るAの声は、震えていた。

「キヨくんの顔、わかんないけど、キヨくんのこと大好きだから…」

小さく嗚咽が聞こえ、何も言わずに彼女を抱き寄せた。しばらくして、Aは口を開いた。

「だから、私のこと、嫌わないで……？」

Aはそのまま、俺の腕の中で泣いた。その背中をひたすら撫でた。

「嫌わないよ、嫌わない。絶対に大好きだから。Aのこと、愛してるよ」

少しずつ、ゆっくりでいいから。なんなら俺の顔なんて、見えなくてもいいから。

お前が望むことに、俺は全力で協力するよ。

フジが起きた。Aはもう泣き止んでいた。俺はポカンとするフジに全部を説明して、謝られて感謝された。

フジは、俺とAが仲良く話すのを嬉しそうに見ていたが、その気持ちが俺にはわからなかった。