百三人目のハグ ページ13
Aside
「Aちゃん、ちょっと来て!」
放課後、モストロ・ラウンジに来た私はフロイド先輩に手を引かれてVIPルームに連れていかれた。
入るなり目に飛び込んできたのは、小さなツボ。
その中から小さい男の子の泣き声が聞こえる。
「アズールが急に小さくなりまして、さっきからずっとツボに閉じこもって出てこないんですよ」
「Aちゃんどうにかしてくんね? うるさくてイライラすんだよね」
どうやらツボの中には小さくなったアズール先輩がいるようで、二人がどれだけ声をかけても出てこないみたい。
静かにツボに近づいて、しゃがんでからゆっくりツボをノックしてみる。
『アズール先輩、Aです』
「……かえってください、こんなすがただれにもみられたくありません!」
『なら、出てこなくてもいいので話を聞いてください。
私はアズール先輩がどんな姿でも、今までと何一つ変わりませんよ。
だっていつも私が見ているのは、アズール先輩そのものであって外見ではありませんから。
ずっと努力を重ねてきて、一生懸命なアズール先輩をいつも尊敬しているんです。
今も昔も、アズール先輩は素敵なままなんですから、それを忘れないでいてくださいね?』
言い終わり立ち上がろうとしたとき、ツボの中からにゅるりと二本の蛸足が出てきて、私の腕に絡みついた。
受け入れるように手を広げると、中から黒い塊が勢いよく飛び出し、私に抱きついてきた。
『やっぱり素敵じゃないですか』
「うぅっ……こんなぐずでノロマなぼくがすてきなわけがないっ!」
『いいえ、アズール先輩は素敵です。勤勉で努力家で、ちょっぴり泣き虫の素敵な人魚さんです。
それに今の先輩、とっても可愛らしいじゃないですか! もちもちすべすべで、私は好きですよ?』
私にしがみつく
ほらやっぱり、素敵なアズール先輩だ。
だって先輩は先輩のままなんだから、何一つ変わらないよ?
「Aさんは……こんなぼくでも、すきなんですか?」
『はい、だってアズール先輩を尊敬しているんですから! 姿なんて関係ありませんよ』
「やだっすきっていってください! いうまではなれませんからね!」
『ふふ、アズール先輩好きですよ! 何度でも言います』
「〜っ!」
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作者名:冥界の女王 | 作成日時:2023年5月28日 15時