九十三人目のハグ ページ2
ラギーside
Aはいつも、俺のことを気にかけて手伝ってくれる。
スラム育ちで嫌われ者の
それが心地よくて、毎回Aと話す度に、俺の場所はここなんだって安心する。
だからこそ、誰かに食われたりしないか心配で、手の届くところに置いておきたくなるんスよ。
『ラギー先輩、こっち終わりました！ 次は何をしたらいいですか？』
「流石早いッスね、次はこっちを頼むッス！」
『はーいお任せください！』
Aと二人で分担しながら、洗濯物を干していく。
いつもより早く終わりそうッスね、Aが率先して手伝ってくれるんで、毎回助かるんスよ。
けど、たまにもう少しゆっくりやってもいいのになって思うんス。
だって終わったら、またAはどこかに行ってしまうじゃないッスか。
「後は俺のシーツだけなんで、Aは休んでていいッスよ」
『最後まで手伝いますよ、ラギー先輩こそ休んでください！ いつも一人で大変でしょうし、こういう時くらい私に頼ってください！』
ほんと、Aってお人好しッスよね。
まあそんなところにも、俺は惹かれてるんスけど心配にもなるんスよ。
「あ、じゃあ干す前に……ちょっと広げておいてほしいッス」
『こう、ですか？』
「そのままそのまま……よっ！」
『わっ……！』
シーツごとAを抱き締める。
こうでもしておかないと、アンタはすぐ誰かのところに行って、俺から離れてしまうんスから、これくらいは許してほしいッス。
『ラギー先輩……？』
「シシシッ……A、捕まえたッスよ」
シーツに包まれてきょとんとしているAを強く抱きしめて、シーツにAの匂いが付くように擦りつける。
これで夜寝るとき、Aを感じられるッスね。
『えへへ、捕まっちゃいました！ このシーツ、洗剤の匂いとは別にお日様の匂いがする……まるでラギー先輩みたい！』
「〜っ……アンタそれ分かって言ってるんスか？」
ああ、まだまだ敵いそうにないッスね。
けどいつか、必ず俺のもんにするんで……油断大敵ッスよ？
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作者名：冥界の女王 | 作成日時：2023年5月28日 15時
