113.居場所 ページ23
・
まるで守るようにお店全体を覆ってた蔦は大元の根はもう殆どダメになっていたらしく
解体工事が始まる時に『もう諦めた方がいい』って言われた。
せっかくお店を守ってくれてた(って勝手に思ってただけだけど)のに
私にはどうにも出来なくて凄く悲しかったけど
隣にいたおーちゃんがぎゅっと私の手を握ってくれたし
みんなもずっと一緒に見守ってくれたから
私はほんのちょっとの涙で抑える事ができたんだった。
「樹木医さんにね、相談したんだ。」
「じゅもく…い？」
「ん、木のお医者さん。そしたら葉先の方ならなんとかなるからって、ここまで育ててくれたんだ。」
愛おしそうにその葉っぱを見つめたおーちゃんが
「今度はココでこいつを守ってやらなきゃね。」
そう言ってコトンと小窓の側に優しく置いた。
シンプルな素焼きの鉢植えに収まったその蔦は陽射しを浴びてすごく気持ち良さそうにそこにいる。
「おーちゃん、ちゃんと居場所を作ってくれてありがとう。」
「Aの大事なもんだろ？だったら当たり前のこと。」
当然のようにそう言ったおーちゃんだけど蔦の事だけじゃないんだけどね。
そっと私の手を握ったおーちゃんは「こっち。」ってキッチンへと続くドアをゆっくり開けてくれた。
「あ！マツジュン！…と！出た！」
「出たって(笑)」
キッチンで作業してたマツジュンはぷはっと笑ったけど。
だっていつもこの人って…
「智！なんで他の女と手繋いでんのよ！」
ほら、また始まった。ジャンの愛人ごっこ。
「いや、それもう飽きたから。」
「飽きるの早くない？智、こんな女のどこがいいのよ！」
「おっさんよりよっぽどいいだろ。」
「おーちゃん、それフォローになってない。」
ジャンに会う度にほとんど毎回繰り広げられるこのくだらないコント(？)だけど
いつもはっはっはっ！と子供みたいに楽しそうに笑うジャン(推定60歳くらい。今度ネットで調べてみよう。)は
おーちゃんと同様に私の事もすごく可愛がってくれている。
(いつもパンをあげてるからか…？)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1413人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えこる(プロフ) - ちぇろさん» ちぇろさん♪初めまして！凹むことがあったんですね、大丈夫ですか？私のお話しでほっこりしてもらえて嬉しい！凹む事もふと出会えた事もきっと大切な分岐点ですね。こちらこそ、読んで下さってありがとうございます。 (2018年12月16日 7時) (
レス) id: 65a91b6069 (このIDを非表示/違反報告)
ちぇろ(プロフ) - はじめまして。ふと出会って、イッキ読みでした。ちょっぴり凹んでいた今日がほっこりに変わりました。素敵なお話ありがとうございました。 (2018年12月15日 20時) (レス) id: 41e005de67 (このIDを非表示/違反報告)
えこる(プロフ) - marigd88さん» 初めまして！うわ！なんだか素敵な感想ありがとうございます(≧∇≦)そう言って貰えてホントに嬉しい。読んで頂いてありがとうございました！ (2018年2月20日 18時) (レス) id: f3db2eb862 (このIDを非表示/違反報告)
marigd88(プロフ) - 初めまして、なんだか疲れた心がスッと軽くなるようなお話に出会えて幸せです。ありがとうございます！ (2018年2月20日 1時) (レス) id: 568559de4b (このIDを非表示/違反報告)
えこる(プロフ) - あんこさん» あんこさん、コメントありがとうございますm(_ _)m涙流して貰えるようなとこあったかな…と、書いた本人既に忘れてますが、読んで貰えて凄く嬉しいです。ありがとうございました！ (2017年10月28日 22時) (レス) id: f3db2eb862 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えこる
作成日時：2017年2月17日 9時
