51.天空闘技場 ページ1
試験終了から3日後。クルーザーを陸上保管のマリーナに預けた私は、空港でヒソカを待っていた。
ギリギリの預金残高を確認して溜息を吐いたこの瞬間を狙ったかのように、背後からすっかり聞き慣れた笑い声が聞こえてくる。
｢くっくく……すっからかん♥｣
｢ちょっと、他人の通帳見るなんて悪趣味よ｣
さっと通帳を仕舞い、くるりと後ろを振り返る。
｢人前で見ているAが悪い♠｣
さも当然と言い放った彼は、悪びれるどころか｢ほら早く♦｣と私を急かす。
──待たせていたのは其方でしょうに。
しかし口論になってしまうと勝ち目はないので、喉元まで出かかったその言葉を飲み込んだ。その代わり、わざと不機嫌な声で質問をする。
｢……チケットは？｣
｢必要ない♥ 乗るのはボクの私用船だから♦｣
｢何の嫌がらせよ……｣
機転を利かせたつもりのそれは大失敗に終わった。行き場の無い悔しさを発散させようと、指先でペンダントを弄ぶ。
｢ボクには余裕があるからね♣ ……誰かと違って♥｣
完全にトドメを刺されて凍り付いた私を、呆れたようにヒソカが笑う。
｢……そこまで拗ねなくてもいいだろう？｣
｢だって、悔しかったんですもの｣
｢ふうん♣ 事実なんだから仕方ないと思うけど♠｣
｢嗚呼もう、ヒソカの馬鹿！｣
散々煽られて、耐えかねた私はついに声を荒らげた。
｢くく、そうやって素直に騒いでいる方がキミらしい♦｣
冷たく嘲るその言葉は、彼が私の頭を撫でながら言ったという単純な理由で角砂糖の如く私の中に溶け込んでしまった。
｢……知らないわ｣
ぶっきらぼうに言い放ったけれども、赤く染まった顔はどうしようもない。
｢ほら行くよ♣｣
珍しくふわりと笑いかけてくれたヒソカに小さく頷き返し、飛行船に向かった。
しかしその優しさは束の間のもので、船内でもヒソカは私の預金残高だの性格だのを揶揄い続けるのだった。
｢……もう帰りたいわ、私｣
｢帰る金はあるのかい？｣
｢無い……｣
無事に天空闘技場に着いたはいいが、船内でもヒソカにいじられ続けてすっかり疲れてしまった私は弱音を零した。
｢そんな可哀想なキミに残念なお知らせだ♦｣
恐る恐る彼の指差す先を見る。
｢これに並ぶのね……？｣
｢その通り♥｣
眼前に広がるは、人相の悪くて体格のいい男ばかりの行列。
｢大丈夫、全部ボクより弱いから♦｣
失礼極まりないその励ましに思わず笑ってしまう。｢ありがと｣と小さく返して列に並んだ。
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愛赦(プロフ) - Ashさん» ただいま！と答えてみます！！ 嬉しいです、ありがとうございます！ (2018年4月5日 23時) (
レス) id: 3e889bc628 (このIDを非表示/違反報告)
Ash(プロフ) - おかえりなさい！待ってました！！ (2018年4月5日 7時) (レス) id: a6c8ba769b (このIDを非表示/違反報告)
愛赦(プロフ) - Ashさん» お祝いありがとうございます！ そう言って頂けて幸せです、更新頑張ります！ (2018年2月28日 0時) (レス) id: 3e889bc628 (このIDを非表示/違反報告)
Ash(プロフ) - 続編、待ってましたー！！もう、ヒソカの変態的な紳士っぷりが、素敵です。すごく、好きです。改めておめでとうございます！！ (2018年2月27日 21時) (レス) id: 756149ac18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛赦 | 作成日時：2018年2月27日 18時
