初恋 ページ18
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両脇に出店が立ち並び、とても賑やかな通りに面した少し奥まった場所にある公園。
町の小さなお祭りで家族と一緒に楽しく過ごしていた幼い少年は、見かけた猫を追いかけてひとりその公園までやってきた。
ところがここまで来たのはいいものの、いつの間にか猫を見失ってしまったようだ。
「こっちだよ」
遊具の影を覗いたりキョロキョロと周りを見渡していると、その声とともにつかまれた手。
驚いてそちらを見れば、少年と同じぐらいの年齢と思われる少女の姿。
クイッと手をひかれて知らないその子についていくと、茂みの奥で先程の猫を見つけた。
「ちっちゃい…」
「かわいいね…」
母猫だったらしく、寝そべってとても小さな子猫たちにミルクを吸わせている。
どこか神聖で温かなその光景を、ふたりは一緒にしゃがみこんでただ見つめていた。
そのうちあまりに可愛らしい姿に、少年は繋がれていない方の手をつい伸ばしてしまう。
一瞬のできごと。
警戒した母猫にパシンッと手を叩かれて慌てて引っ込める。
人間といえど子供だからと手加減したのか、それでも小さく血がにじんでいた。
びっくりして声も涙も出ず呆然としている少年に少女が声をかける。
「洗わなきゃ」
「うん…」
また手をひかれて水飲み場へいくと言われるまま手を洗い、渡されたハンカチで濡れた手を拭う。
次に少女が肩からかけてた白いポシェットから取り出したのは、肉球の絵が並んだ絆創膏。
真剣な表情でそれを傷に貼ってくれた少女が、顔を上げてニコリと笑う。
「できた！」
「…ありがとう」
「ちゃんとおとなの人に見せてね？」
「うん」
「あっ、おにいちゃんだ！」
誰かを見つけた少女がそちらに駆けだそうとしたから、思わずさっきまで繋いでいた手をつかんだ。
不思議そうに振り返られて、パッと手をはなす。 きょとんとした少女の後ろから、少女の名前を呼ぶ声。
「…またね」
「うん！ またね！」
元気に手を振って走っていった少女の名前を口の中で呟いてみる。
一瞬で大好きになった笑顔と、その持ち主の名前を忘れちゃうのはイヤだな、と少年は思った。
その時、今度は少年を呼ぶ声。
「樹！ もう、勝手にいなくなっちゃダメでしょ！」
「…ごめんなさい…」
「あら…その手、どうしたの」
「…あのね、―――」
『またね』 と。
その日の小さな小さな…約束ともいえないそれが叶うのは、まだずっと先のこと。
end
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ちょる(プロフ) - 優希さん» うわぁ…嬉しいお言葉どうもありがとうございます！優希様を少しでも癒せているのなら良かったです。頑張って更新しますね！ (2020年8月29日 0時) (
レス) id: 7af395255e (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 5周以上読み返しています笑樹くんも彼女も可愛くていつも癒されていますこれからも応援させてほしいです(^^)頑張ってください！ (2020年8月25日 21時) (レス) id: 307e0556dd (このIDを非表示/違反報告)
ちょる(プロフ) - やのさん» コメントどうもありがとうございます！やの様のお宅にも天使ちゃんがいるのですね〜嬉しい偶然でした。少しずつですが更新頑張りますね！ (2020年6月14日 21時) (レス) id: 7af395255e (このIDを非表示/違反報告)
やの - 偶然にもうちの愛犬と同じ名前でビックリ 笑 これからも更新頑張ってください！ (2020年6月14日 17時) (レス) id: 5ec2e089be (このIDを非表示/違反報告)
ちょる(プロフ) - ゑ。さん» 感想頂きどうもありがとうございます！猫のようにマイペースな感じが出てたら嬉しいです。少しずつお話増やせるように頑張ります。 (2020年5月3日 22時) (レス) id: 7af395255e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちょる | 作成日時：2020年4月28日 21時
