猫みたいな彼と彼女のお話

雨の朝 ページ21

side 彼


ごはんを食べ終わったあとの汚れた口まわりを拭いて、額を撫でれば満足気な顔。

「イイコにしてて」

そう言いながらお気に入りのぬいぐるみを傍に置いてやれば、すぐにじゃれつきはじめた。



自分の部屋に戻り、ドアは開けたままにしておく。

窓際に寄せて置いたセミダブルのベッドには、それ以上行けないくらい端っこに寄ったAの姿。
こちらに背中を向けているからタオルケットに潜り込み、沿うようにしてくっつくと唸りながら身じろいだ。


「…んぅ…藤原くん…？」

「ごめん…起こした？」

「ん…あー…雨…」

「うん、雨降ってる」


風は強くなさそうで、ざあざあと雨の落ちる音が静かな部屋に響いている。


「あ…ゴハン…」

「今やってきた」

「ありがと…」


話してる間にも気を抜いたらすぐに夢の中に戻ってしまいそうな、寝起き特有の鼻にかかったAの声。
普段は別々の部屋で寝てるから、休みの日の朝にはこのぽやぽやとしているAを見るのが少し楽しみでもある。

タンクトップから出てる薄い肩になんとなく口付けると、くすぐったそうにこちらに寝返りをうったからそのまま胸に引き寄せた。


「…アンジュ…大丈夫かな…」

「ドア開いてるから…寂しくなったらくるよ」

「そうだね…」



雨の日の猫はよく眠る。

安心したように再び目を閉じたA。
眠気を誘う雨音を子守唄にふたりで寝坊しよう。

目が覚めたらブランチにパンケーキでも作ってやろうかな。
腕の中の温もりに、そんなことを考えながら自分もまた目を閉じた。



end

ベランダにて→←天使がやってきた-2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す