10人目は辞めたい。

＊21 佐久間side ページ21

.



Aが亡くなって1週間が経った。
テレビやSNSはもう他のニュースを取り上げていて、Aのことはあまり書いてなかった。
切り替え早すぎだろ。
Aは誰に対しても優しくて、熱かった。



｢さっくん？どした？｣

佐 ｢やっぱりアニメオタクって気持ち悪いのかな｣

｢···誰に言われたの？｣

佐 ｢さっき共演した女優さん。笑顔で返しといたけど好きな物を悪く言われるのってやっぱり辛いよね(笑)｣



アニメやゲームが俺の趣味で、大好きなもの。
それをバカにしてくる人がたまにいて、収録中だから我慢するしかない。
笑われたりしたら結構くるんだよな。



｢待ってて。言ってくる。｣

佐 ｢え！？A！いいって！｣

｢良くない！｣



Aは女優さんの楽屋に行って帰ってきたのは20分後だった。
目に涙を浮かべて、でも笑顔だった。



佐 ｢A···？｣

｢さっくんの仇は打ったぞー！(笑)｣

佐 ｢なぁ、A！｣



Aは涙を流して話し始めた。



｢···めちゃくちゃ悔しい｣

佐 ｢うん？｣

｢さっくんがアニメの話してる時の楽しそうな雰囲気が大好きなの。
わたしはさっくんみたいに没頭できる趣味とかないから好きな物のことでそんなに熱くなれるのって凄い素敵なことだなぁって。｣

佐 ｢うん、うん｣

｢それをバカにする人は誰であっても許せない。
きつーく言っといたから！好きな物は好きでいいんだよ！｣

佐 ｢A···ほんとにありがとう｣

｢んーん！また話聞かせてね？｣

佐 ｢うん！｣



後から分かったこと。
Aは俺をバカにしてきた女優さんから共演NGが出たらしい。
女優業がメンバーの中で1番多いAからしたら何個か仕事を失うと思う。
それを知ってもAは『そんなんどうでもいいよ』って笑ってた。
凄いな、強いなって思ってたけどそうじゃなかった。
強いんじゃなくて我慢してたんだ。

＊22 岩本side→←＊20 阿部side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す