あいつはあの子のもの－風磨－ (ページ37)

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｢……もしもし｣

健人｢久しぶりだね、電話すんの。笑｣

｢…そうだね。笑｣

｢……っていうか、なんでいきなり

電話してきたの？｣

健人｢急にお前の声が聞きたくなってさ｣

そう言って、俺は踏み出すべき方向とは

逆方向に一歩踏み出した。

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風磨side

家につくと、俺はすぐに部屋にこもった。

ドアを閉めてから

そのままドアに寄りかかって

さっきのことをふと思い出した。

－"あたしが好きなのは…風磨だけだよ"

あの時の君の表情が頭から離れない。

俺を想って流した涙に、

つい見入ってしまった。

本当はすごく嬉しかった。

心臓が飛び出しそうなほど

脈が速くなって、一気に顔が熱くなった。

前々から嫌な予感はしていたんだ。

自惚れてるだなんて

思われるかもしれないけど、

君は俺のことが好きなんじゃないかって

心のどこかでそう思っている自分がいた。

でも、昨日下駄箱で

中島とキスしてるのを見て、

まさかなんて思ったけど、

一緒に二人で祭りに来てて、

…それに、あんな見せつけられるような

キスしてるとこ見て、

付き合ってるんだって

その時やっと確信した。

あれ以上二人の姿を見たくなかった俺は、

あの場から逃げ出したというのに、

それでも君は俺を追いかけてくれて。

なのに、あいつバカだから、

迷子になりやがって。

いきなり人混みの中で泣き出すし。

ったく、逃げ出した俺が追いかけてきた君を

先に見つけるとか、ありえねぇだろ。

なんて思いながらも、放っておけなかった。

気がついたら、君を抱きしめてる自分がいて。

(人1)のこととか、全く頭になかった。

でも、ふと我に返った時、

いつも君は(人1)の話をするんだ。

あいつの頭ん中 (人1)のことしか

考えてないんじゃねぇのって思うくらい、

いつも(人1)の心配ばかりしてくれてる。

風磨｢……ったく、中途半端に

いい人すんじゃねぇよ｣

(人1)のことを利用して

俺に近づいてきたんじゃないか

って思うと、普通なら嫌いになるはずなのに、

風磨｢なんで嫌いになれねぇんだよ……｣

頭をかきむしりながら、

大きくため息をついた。