氷の人魚姫《6》

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グレースらしくない。今の彼女はこれに尽きる

しかしこれが本来の彼女なのだ。
本来の彼女は6歳の時点で止まっている


どれだけ強気に振舞っても、彼女の本質は変わらない

隠すのが上手いだけで、
強いフリをするのが上手いだけで

一つボロが出れば、彼女は小さく孤独に怯える
ただの一人の少女なのだ。


半分正解で半分間違い。

記憶の混濁のせいで
前の彼女になりかけているのは正解

でも、この姿が本来の彼女なのだから
涙を記憶のせいにするのは間違い

そしてこの涙を独り流し続けるのも…間違いなのだ




「……、誰も来なくてよかった」




数十分間、彼女はずっと記憶の整理をしていた。

あるべき場所に記憶を戻し、封印する。
激情にサッと布をかけ、人目に触れぬよう隠す


数十分かけて、彼女は自分を再構築した




「涙の跡ももう無い。絶対バレない。完璧！」




泣いたなんてバレちゃいけない。

これ以上心配かけさせちゃいけない


絶対に悟らせるな、
アズール達にこれ以上辛い思いをさせるな




「今日からウィンターホリデー！
初日から泣くな！
去年はつまらなかった分今年は楽しむぞ！！」




アズール達が私を救えない以上、
私は泣いちゃいけない。弱っちゃいけないんだ


私はもう、彼らに助けを求めちゃいけない


肝に銘じろ。四人で居るために
……これからもずっと、あの人達の側に居るために




「大丈夫、私なら出来る。…だって私だもん」




私はグレース・モルグアーナ。
私に出来ないことなんてないんだから

……それに、




「あの三人の、側に居たいから」




その為なら、何だって出来る

伝説の人魚姫が、自身の声を差し出してまで
人間の王子の側に居ることを望んだ様に

何を対価にしようと、私は＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿




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