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双子は何も言わず、彼の独白を受け入れる。
その無言の肯定を受け取り、
アズールはポツリポツリと話し始めた




「グズでノロマなタコ野郎と呼ばれ
一人ぼっちだった僕を
彼女と居る時間は、唯一認めてくれた」




それは、紛れもないアズールの本心。
オーバーブロットの時の勢い任せに出た言葉じゃない

本人が必死に紡ぐ、拙くも温かな言葉




「ほとんど言葉は交わさなかった。
グレースは慰めの言葉も、
ましてや冷やかしの言葉も言わなかった

彼女はただ、無言で僕と居てくれた

彼女はそんなつもり無かっただろうけど
当時の僕はそれが何より嬉しかった」




前に一度だけ、アズールは聞いたことがあった。

怖くて目も合わさずにボソッと、
なんなら拾って貰わなくても構わないくらいに
小さく、か細く、言った




“……お前は、僕と一緒にいて嫌じゃないのか”




そう言うと背中の彼女は
本をめくりながら平然と答えた




“別に。まず好きとか嫌いとか考えた事ないし”




罵倒されたくはないけど踏み込んでほしくもない。

当時の気難しいアズールにとって、
その答えは彼が一番望んでいたものだった。




“……みんな、僕と居ると
墨で水が汚れるからって近寄らないけど”


“本が読めなくなるほどじゃない”


“……変な奴”




そう言ったアズールの口元は、少しだけ緩んでいた




「借りは作りたくないタチなんですがね、
グレースにはまだ返せていない。
そしてきっとこれからも、返しきれないのでしょう

いや違うな、返すとか返さないとか。
それどころか僕は……」




アズールの淡い瞳がまた、潤んだ。




「ねぇアズール」




その瞳を見たフロイドが、
優しげな口調で彼の名前を呼んだ




「せっかくここに来たんだから楽しい話しようよ、
楽しい思い出の話」


「フロイド…」




少し驚き気味で振り返るアズール。
それを見たジェイドは、口に手を当てて微笑んだ




「では、四人で沈没船へ探検しにいった話
でもします?」


「あはっ!いいねぇ〜」




勝手に盛り上がる二人を見て
アズールは眉を下げて笑い、よいしょと立ち上がった




ep.71 懐古メモリーズ!→←・



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神崎(プロフ) - 桜澤さん» コメントありがとうございます!私も自分で書きながらグレースちゃんが心配です…!どうか最後まで彼らを見守ってあげてください! (2020年12月27日 9時) (レス) id: 57b89da2fa (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - (・ω・`;)=(;´・ω・)アタフタ グレースが心配っ……みんな仲良くなれればいいな……(願い (2020年12月27日 6時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神崎 | 作成日時:2020年12月18日 23時

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