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「あ〜、やっぱいたぁ」




そんな間の抜けた、しかし温かみのある声に
アズールはふと振り向いた。




「まったく。行くなら一言声をかけてください」


「小エビちゃん達先に返しちゃったよ?」


「……何故僕がここだとわかったんです」




その言葉に双子はお互いを見合わせ、
声を揃えて言った




「「勘」」




そう言うと、アズールはぷっと吹き出し
口を押さえながら笑った




「あははっ!フロイドはともかく、ジェイドもとは!
いやまあ、お前達は
どちらもそう言うところがありますが」




そう笑うアズールを見て双子達は驚き、安堵した。




「なんか、アズールが笑ってるトコ
久しぶりに見た気がする〜」


「ふふっ、そうですね」




“いつものアズールだ”、二人はそう心の底から喜んだ

アズールは足元を見る。
双子も一緒にアズールの足元の“それ”を見た




「今見ると、随分小さいですねぇ」


「ねー。ここに二人も詰まってたんだぁ」




そこには、もう使われていない蛸壺があった。
古びたそれには
藻が張り付き、所々欠けていた

アズールはしゃがみ、蛸壺を愛おしそうに撫でる。
中にいた小魚が慌てて出ていった




「これ、俺らが出会った頃のだよね?懐かしい〜」


「ええ。初めて見た時は兄妹かと思いましたよ」


「そんな事もありましたね」




初めて出会った日のこと。
この広い海の中で、四人が巡り合った日のこと




“ねえタコちゃん、
そんな狭い蛸壺に引きこもって何してるの?”


“うるさいな、僕のことは放っておいてよ”


“すごい。どの貝殻にもびっしりと
呪文や魔法陣が書いてある。
……あれ、その奥の人は君の妹さん?”


“なわけないだろ!
コイツは僕の蛸壺に勝手に居座ってるだけだ”


“それは失礼。ねえ君、君は何の本を読んでるの?”


“うるさい。話しかけないで”




ゆっくりと流れる海の微睡み。
それは三人に在りし日の記憶を思い出させる

冷たいはずの海の水が、
どこか優しく、温かく三人を包み込んだ




「しかし、タコとコオリウオを
兄妹と見間違える奴がどこにいますか」


「えー?でもあの時見えたの顔だけだったし」


「貴方達髪色が同じですから」


「微妙に違いますよ。
僕は銀色に近いですがグレースは真っ白です」


「そんなん暗い蛸壺の中じゃわかんねーじゃん」




他愛のない、でもとても大切な思い出。
その時、アズールが零した




「……救いだった」




・→←ep.70 本心リコレクション!



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神崎(プロフ) - 桜澤さん» コメントありがとうございます!私も自分で書きながらグレースちゃんが心配です…!どうか最後まで彼らを見守ってあげてください! (2020年12月27日 9時) (レス) id: 57b89da2fa (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - (・ω・`;)=(;´・ω・)アタフタ グレースが心配っ……みんな仲良くなれればいいな……(願い (2020年12月27日 6時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神崎 | 作成日時:2020年12月18日 23時

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