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ep.69 存在バウンド! ページ39






アズール先輩のオーバーブロットから
二週間が経とうとしていた。

僕達は今、アズール先輩達に招待され
何度目かのアトランティカ記念博物館に来ている。

今度こそちゃんと観光目的で




「みなさん、ようこそアトランティカ記念博物館へ」




みんな少なからず
海の底の文化に興味を持っているのか、
散り散りになって観覧し始めた。

僕だって憧れの人魚の文化だ。
今すぐにでも順路を走っていきたい……でも




「……貴方は行かないんですか」


「写真、一緒に返します」




今はアズール先輩が心配だ




「疑り深いですね。ちゃんと戻しますよ
……ほら、この通りね」


「修正はしてないみたいですね」


「ええ、まあ…」




アズール先輩は、写真の中の昔の自分を
指で触りながらポツリと呟いた




「この頃の自分を
好きだと言ってくれる物好きが居ますし」


「フロイド先輩ですか」


「フロイドやジェイドもですが……」




その眼差しは愛おしさと哀しさが混ざった海の色。




「グレイ…、」


「……どうやら
背中の座り心地が良かったみたいです」




アズール先輩は少し笑った。
そしてしばらくの間、沈黙が続いた

その静寂の中で
アズール先輩の繊細な顔は徐々に歪み、
僅かに下唇を噛み締めて
振り絞るように苦しい声を出した




「グレースはっ……」




悲痛な声が、誰もいないロビーに響く




「グレースは、肉が好きです!」


「……えっ、アズール先輩?」




突拍子もない発言。思わず僕は間抜けな声を出すが
アズール先輩は必死に続けた




「特に、陸に上がってからは牛丼が好きです。
基本的に好き嫌いはありませんが
唯一トマトだけ嫌いです。
それ以外は何をどれだけ出されても完食します」


「えと、あの……」


「グレースは本が好きです。

何処にもいない時、連絡がつかない時は
とりあえず図書館へ行ってください。
それか読書ができそうな静かな場所です

それから、貴方の居た世界のお話も
沢山聞かせてあげてください。
きっと目を輝かせて熱心に聞いてくれます」


「アズール、先輩……」


「あと、グレースは自由奔放過ぎる所があります。
しかし一つ仕事を与えれば
完璧にこなしますし、それまで動きません

扱いはものすごく難しいですが、
きっと貴方の役に立てると僕が断言します。

だからっ…、だから……!」


「アズール先輩!!」




僕の大きな声に、先輩は体を揺らした




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神崎(プロフ) - 桜澤さん» コメントありがとうございます!私も自分で書きながらグレースちゃんが心配です…!どうか最後まで彼らを見守ってあげてください! (2020年12月27日 9時) (レス) id: 57b89da2fa (このIDを非表示/違反報告)
桜澤(プロフ) - (・ω・`;)=(;´・ω・)アタフタ グレースが心配っ……みんな仲良くなれればいいな……(願い (2020年12月27日 6時) (レス) id: 20b9b01cf5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:神崎 | 作成日時:2020年12月18日 23時

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