拾玖ノ話 ページ20
Aside
「無一郎を困らせることを承知で言うね。」
私はゆっくり深呼吸をしてから事実を伝えた。
─────お腹の中にもうひとつの命があるの。
なんて言われてしまうんだろう。
受け止めてくれるのかな?
私の心の中は不安でいっぱいだった。
無一郎の顔もろくに見ることも出来なくて、ずっと俯いていた。
少しの沈黙。
無一郎も混乱しているのだろう。
たった数秒なのに何年もの間が過ぎていくような、胸が締め付けられる時間。
私はただただひたすらこの時間に耐えて無一郎の返答を待った。
ギュ
え?
何か話すと思っていたのだが、無一郎が私を抱き締めた。
かわいい顔立ちをしていてもやはりがっちりしているその腕に私の体はすっぽりとはまる。
「それ、僕に話したってことは、僕の子供で合ってるんだよね?」
私はこくりと頷いた。
「多分だけど、お酒飲んじゃった時だよね…。
ハッキリ言って、あんまり覚えてないんだけど、Aに辛い思いさせてたのにほっとくなんて僕サイテーだね。
言ってくれてありがとう。
責任はちゃんととるから。」
「拒否、しないの?」
「好きな人と自分の子供が出来て、拒否するやつなんかいる?
正直、すっごい嬉しいんだけど。
Aの事だから、産んでくれるんでしょ?」
私は涙が止まらなかった。
なんでこんな良い人にもっと早く言えなかったんだ。
「無一郎、さっき自分のことサイテーだって言ったよね。
違うよ。
サイテーなのは私。
無一郎のこと信じられなくてずっと言えなかったんだから。」
「逆でしょ?
信じてなかったら、話すってこと自体選択肢に入ってないと思うんだけど。」
(……………。)
「ふ、ふふふふ。」
私の口から乾いた笑いが出る。
「なに。怖いんだけど。」
少し上から聞こえてくる無一郎の声。
「ごめんごめん。
いや、なんか無一郎っぽいなぁって。
私こそ、ありがとう。無一郎。」
その数ヶ月後、蝶屋敷から元気な産声があがった。
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カオナシ - たんじろうでてきて〜 (2020年9月6日 16時) (レス) id: 991a5ce654 (このIDを非表示/違反報告)
Blue(プロフ) - sakuさん» コメントありがとうございます!すみません、こちらのミスです……。今すぐ直させて頂きます!教えていただきありがとうございます! (2020年5月15日 9時) (レス) id: f9b0df4936 (このIDを非表示/違反報告)
Blue(プロフ) - *つむり*さん» すみません!抜けてますね(汗)教えていただきありがとうございます! (2020年5月15日 9時) (レス) id: f9b0df4936 (このIDを非表示/違反報告)
saku - 設定のところに「甲(柱の一つ下)」と書いてありますが、「柱」という階級はないですよ!あくまで柱は「甲の中から選りすぐった隊員」という立ち位置なので…_(:3 」∠)_ (2020年5月4日 22時) (レス) id: 6117cf22e8 (このIDを非表示/違反報告)
*つむり* - あれ??弐拾壱ノ話が抜けてる?? 私の勘違いでしたらすみません汗 (2020年4月21日 5時) (レス) id: b24827ee5c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Blue x他1人 | 作成日時:2019年9月28日 21時