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A「…………聞いてない、んだけど。」
慧「うん。てかまだ母さんも知らねーもん。
Aに初めて言った。」
まるで大したことでもないかのように、慧はまだ火のついていた煙草を潰しながら、しれっと言う。
慧「正月にさ、」
一緒に住むって決めて、住む場所も決まってねーけど、籍だけ先に入れよっかって話になって、書いたんだわ、婚姻届。
一緒に出しに行こって言ったけど予定合わねーってズルズルなってて。
んで、向こうが出しとくよって言ったから頼んどいたの。
そんなこんなで部屋探したりしてたんだけど、いよいよ寮出なくちゃいけなくなって。
でもまだ決まんねーから、彼女もいいよ、初めは一人暮らしするから、つってワンルーム借りてさ。
まあそこから何となくおかしくなってたんだけど、別に気にしなくてもいっかーって知らん振りしてた。
結婚式場の下見とか行って、だけど何でか彼女の方が煮え切らなくて、何も決めようとしねーの。
さすがに何で？って聞いたら、
結婚やめよ、別れよって言われた。
本当はまだ籍入れてないの。
届、私がずっと持ってた。
って渡されてさー。
淡々と慧が話す。
頭の中を聞いたことのない音楽が回る。
ほろ苦いカフェラテが回る。
くるくる、私の頭の中を回って、
そして現実味がないまま頭の中を出ていった。
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作者名：環
| 作成日時：2018年5月14日 13時
