今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:58,429 hit
小｜中｜大
64 ページ15
物理的に離れていたかった。
これ以上、慧に甘えて、
その度に慧を好きだ、と思う自分が嫌だった。
これ以上、慧の中で自分の存在が小さくなっていることを知りたくなかった。
とにかく私は、遅過ぎたんだ。
7年も経ってようやく、
慧に触れたい、と思うなんて。
だけど本当は、ずっと前から知っていた。
あの日。
裕翔に初めて触れた日から知っていた。
いつだって、私は裕翔に慧を重ねていたから。
裕翔の体に触れるたび、
私は慧の感触を思い出していた。
いつだって、瞼の裏には慧の顔があったから。
慧は私が好き、だなんて
とんだ思い上がり。
ふざけている。
いつだって、想っているのは私の方だったから。
だから、そう願いたいだけだった。
怖かったのは、
慧が私のことを好きじゃないと知ること。
男になっていく慧が、女としての私しか必要としていないことを知ること。
あんなに優しく触れる男が他にはいない、ということを、私はまだ知らなかった。
知っていたら、どれだけ想われていたかを知ることは容易かったのに。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 297人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：環
| 作成日時：2018年5月14日 13時
