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慧なんて好きじゃない。
結局そこに戻る。
好きだけど、恋じゃない。
慧は私の大好きな幼馴染み。
そうだ。
そうなんだ。
慧と久し振りに手を繋ぎながら歩く景色は、
驚く程いつもと違って
私の頭の中には色んな理屈が回っていた。
自分の気持ちを、行いを、
正当化させるためだけの言い訳。
だけど本当は分かっていた。
今ここで私が慧に本当の気持ちを告げないのは、
勇気がないだけだ。
とっくの昔に、慧は私のことなんて好きじゃなくなっているのかもしれない。
本当に慧が私のことを好きだったのかさえ、分からなくなっていた。
違う。
あの時から、
実感したことなんて一回もなかった。
だから、怖かった。
それを知るのが、
ずっと、ずっと怖かった。
結局私は自分が傷付くのが嫌なだけだった。
＊
それから秋になって就活を始めると、
私は微妙に東京から離れた場所を回った。
一人暮らしするくらい、
遠くに行きたかった。
このまま慧と一緒にいても、
苦しいだけのような気がしていたから。
近所に住んでいても殆ど会うことはなかったけど、会おうと思えばすぐ会ってしまう、その距離が嫌だった。
.
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作者名：環
| 作成日時：2018年5月14日 13時
