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慧「帰ろっか。」
手を繋いだまま歩き出す。
子供のときみたいに。
浴衣の私に合わせて遅い歩調で。
変わらない優しさ。
いつでも変わらない慧。
なんで今まで私は、
自分の気持ちを認めようとしなかったんだろう。
私を歩かせてくれたのは
いつだって慧だったのに。
なんで私は、
こんなに自分勝手で、
何で今更、
なんで、なんで、なんで。
他の女に触れるのが
あんなに嫌だったのに。
慧に触れられるのが
あんなに嫌だったから。
ああ、そうか。
結局そうか。
私はまた、
慧のことを拒むかもしれない。
そんな自分勝手な話が許されるわけがない。
好きだよ。
誰より好きだよ。
だけど、
彼女のところに行かないで、
なんて言えない。
また、
慧のことを傷付けるかもしれない。
そんなの嫌だ。
でも他の女を抱きしめないでほしい。
私だけを抱きしめてほしい。
なんて、自分勝手な。
そんな自分にまた嫌気がさす。
そうか。
私は今まで慧の気持ちに気付かない振りをして蓋をしていた。
そうか。
罰が当たったんだ。
今度は私が、
自分の気持ちに蓋をするべきなんだ。
.
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作者名：環
| 作成日時：2018年5月14日 13時
