シグナルチェンジ…Kei.I… (ページ9)

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ああ、信号が、青だ。

アイスが、溶ける。

頭が痛い。

耳鳴りがする。

もう一度鳴らされるクラクション。

痺れを切らしたように、
横を後ろの車が追い越してゆく。

慧が一瞬、バックミラーを見る。

もう後ろには誰もいない。

ハンドブレーキを思い切り引いた。

違う。

駄目だよ、慧。

そんな慧、嫌だよ。

だけど、あの時と同じ。

抵抗する気はなかった。

慧がしようとすることに、
私は抵抗する気なんてなかったんだ。

…そうやって慧にばかり、
責任を押し付けようとする私は卑怯だ。

でも、今、
私はもういい大人で。

彼もまた、
しっかりといい大人になってしまった。

青信号が、黄色信号に変わる。

赤信号に変わる直前。

慧はあの日よりも唐突に、
だけど噛みつくような強さで

私の唇に触れた。

気が付くと私は目を閉じていた。

唐突なことだったのに、
それでも慧の顔が近付くと
条件反射のように目を閉じていた。

それが至近距離に物を見たくないという
人間としての本能なのか、

私の意思なのかは分からないけど。