28 ページ28
＊
下校途中に寄り道していたせいで、
最寄の駅に着いた時にはもう日が暮れ始めていた。
(ああ、何だか疲れた。
よく分からない悪口にも出食わすし。)
やる気なく歩きながらスマホを眺めるも、
こんなときに愚痴を言える相手なんて
一人しかなくて、私は帰る方向を少し転換する。
もしかしたら、
もう帰ってるかもしれない。
電話もメッセージもあんまり好きじゃない慧に
それをするのも億劫だったし、
それ以上に顔を見て話したかった。
慧に、どうしたの、って
頭を撫でられたかった。
しょーがないな、って
抱きしめられたかった。
私が甘える時、
いつだって慧はそうしていた。
慧の家の前に着くと、
家の明かりが点いていないようだった。
誰もいないのかもしれない。
慧の家族はみんな頻繁に出掛けているし、
慧もきっとどこかで遊んでるんだろう。
そう思って、通り過ぎようとした。
だけど、
何故か私は門を開けて扉の前に立っていた。
何だろう。
分からないけど何かが違う気がした。
チャイムを押す。
耳を澄ませる。
此方に人が向かってくる気配はない。
だけど、なんとなくだけど。
きっとこの家に誰かいる。
もう一度押す。
だけど、誰も向かってこない。
もう一度。
だけど、誰も。
勘違いだろうか。
いや、でも何だか、
何だか胸がざわざわする。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 361人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：環
| 作成日時：2018年4月22日 12時
