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慧「A、」
A「んー？」
慧「高校受かったらさー、一緒に行こ。朝とか」
A「えーやだ、慧待ってたら遅刻するじゃーん。」
慧「じゃ、遅刻しなそうな日だけ。」
A「…受かったらね。」
慧「ん。受かったら。」
私は慧に背を向けていた。
ベッドで雑誌を読む慧に背を向けて、
目の前の画面に目を走らせていたから。
慧の方は見れない。
だって私はゲームをしてるから。
だから、
私はそのまま慧に背を向けていた。
だって、
もう一度、慧の方を見てしまったら。
私は。
慧は。
慧「下行くけど、なんか飲む？」
A「あ、じゃあお茶」
慧「はいよ〜。」
慧がベッドから降りる。
私の背中に緊張が走る。
だけど、慧の足は私に向かわず
そのまま迷うことなく扉に向かう。
開いて、閉じる。
階段を下りる。
私は手にしていたコントローラーを床に落とした。
自分の手を見る。
少し汗ばんだ手が、小刻みに震えていた。
(小さいな。)
慧のに比べたら、小さくて非力な手。
こんな、こんな小さな手で抵抗をしても、
慧の力には到底敵わない。
膝を抱える。
体全体が震えているみたいな感覚になる。
何なんだ、これは。
私なんて、簡単に、
慧にすっぽりと包まれてしまう。
あの硬い体の中に。
嫌だ。
あんな、
硬い腕、硬い胸、硬い指、硬い首、
のどぼとけ、息遣い。
あんなの、
あんな慧、嫌だ。
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作者名：環
| 作成日時：2018年4月22日 12時
