ポプリ...a short story... (ページ26)

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一瞬の、間。

不器用に、でも柔らかく私を包んでいた腕。
それがぎゅっ、と私を抱き竦めた。

私と彼……
光の間にあった距離が殆どゼロに近付く。

薄いＴシャツ越しに触れている、
細い見かけからは想像もつかないくらい逞しい身体から響いてきた、鼓動の音。

光のそれが私と同じ速度で拍動を刻んでいる。

不意に熱が離れていく。
思わず顔を上げて、笑ってしまった。

だって、部屋のライトの逆光でも分かるくらい。

A「…顔、あか」

光「ばっ、うるせぇ！」

照れ隠しなのか、
もう一度きつく抱きしめられて
今度は何となく安心感を覚える。

光「…A」

A「…なに」

ふ、と腕の力が弱まって、その代わりにごつごつした手が私の顔に添えられた。

恥ずかしさから慌てて下を向こうとしたら、
ぐい、と強引に上を向かされる。

少し落ち着いていた心臓がまた、忙しなく鼓動を始める。
もう胸が痛い。熱い。

ドキドキし過ぎて壊れてしまいそう。

反射的に目を瞑る、その直前。
緊張した、余裕のない真剣な視線に射抜かれて。

ぎゅっと瞳を閉じると、
そっ、と唇が降りてきて、次いで右手が触れた。

触れた熱はやっぱりどこ迄も優しくて。

ああ、この優しさに、
彼に出会えて良かった。
そう、思った。

Protagonist of this story...

Hikaru Yaotome