ポプリ...a short story... (ページ23)

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A「誕生日おめでとう」

パーンッ！と景気のいいクラッカーの音と、
さしていつもと変わらない低い自分の声。

そのギャップに驚いたからかどうかは知らないけど、玄関に立った彼はぽかんとして立ち尽くした。

呆気にとられた表情にちょっと笑って、
入ったら？と促す。

光「…び、っくりしたー」

A「それは良かった。わざわざ百均で買ってきた甲斐があったよ」

光「まじ嬉しい。てか覚えててくれたのな！
ありがと！」

眩しい笑顔に少し視線を逸らして、
カレンダーに書いてあったし。と素っ気ない返答をする。

……ああ本当に、
自分で言うけど可愛くない。

光「お、カレー！すげーうまそー！」

素直に感情を表現できるこの人が羨ましい。
本当は、私も…

A「冷めないうちに早く食べよ。
手、洗ってきたら？」

光「はいよ、了解ー」

一回入ってきた部屋を出て、
洗面所に立つ横顔を見て、こっそり溜め息をつく。

私は未だに、自分を守ることを優先している。
気持ちを曝け出すことは、弱みを晒すこと。
そういう認識が消えない。

……だけど、変わりたいと思った。
心優しいこの人だけは、傷付けたくない。

彼が笑ってくれるなら。
彼が望むことなら。
何だってしたいと思う。

誰かの為にこんなに何かしたいなんて、初めてだ。

本当に好き、だから。

光「お待たせぃ！食おーぜ！」

鼻歌でも歌いそうな勢いで戻ってきた彼に、
少し吹き出して、一緒にテーブルについた。