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大貴「おまえさっき電話切ったろ」
A「だって着信見たら大貴だったし。
ちょうど会計する時だったんだよね」
大貴「何のためにわざわざ電話したと思ってんだよ」
A「えー？何か用？」
大貴「忘れた」
A「何だそれ」
Aが食べてたアイスのコーンを
横からかじってやったら
無言で肘鉄を食らわされた。
こいつ容赦ねぇな。
Aがわざわざコーンのアイスを選ぶのは
アイスよりコーンが食べたいから。
やっとコーンにたどり着いたのに
俺が貴重なコーンを食べたとなれば
Aにとっては一大事なんだろう。
だっておまえ電話切ったろ。と
言ってやると
何でいんの。と
全然違った質問で返される。
ここに来て、
やっと一台車が目の前を通り過ぎた。
大貴「Aに会いたくなった」
A「うん」
大貴「だけど会ってみたら、そうでもない気がしてきた」
A「うん」
大貴「おまえありえねーよ。
何でこんな時間にこんなとこで、
こんな格好でアイス食ってんだよ」
そう言うとAはようやく、
こちらにちらりと視線を向けた。
だけどすぐにまたアイスと向かい合って
愛しのコーンに口をつけた。
その唇は、
このはっきりとしない世界でも鮮明に赤く見えた。
コーンをゆっくり飲み込んだAは
大貴だって人のこと言えない。と
小さく笑った。
それもそうだ。
Aの格好と言えば、
グレーのスウェットに水色のＴシャツで
前髪は邪魔だとでも言うようにピンであげられていた。
それを突っ込んだ俺も、
白いスウェットにオレンジ色のシャツで
髪はボサボサ。
大して変わんねぇわ。
まあAからしてみても
何で俺がこんな時間にここにいて、
何でさっき電話してきたのか分かんねぇと思う。
A「アイス好きなんだよね」
大貴「おう」
A「スウェット、楽なんだよね」
大貴「おう」
A「夜明けの時間、好きなんだよね」
そう口にしたAに
思わずまた焦りを感じた。
さっきみたいに、
いきなり電話したり、会いたくなったりするような気持ちに駆られる。
何考えてんだ、俺は。
確かに今、Aは俺のすぐ隣にいる。
なのに、そんな気持ちになんのはおかしい。
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作者名：環
| 作成日時：2016年10月17日 20時
