ポプリ...a short story... (ページ12)

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沢山、沢山の人がいて。
沢山の言葉があって。
沢山の気持ちが生まれて。

どれも一つ一つ違うようで
元を辿れば同じものだ。

だけど原子レベルまで分解して
再構築しても全く同じものは生まれてこない。
だから面白い。
だから感情が混沌とする。
だから衝突する。

だから、それで。
だから、こんなにも君が愛しい。

A「高木くん、髙木くん」

雄也「ああ？んだよ」

A「クッキーはいかがですか」

雄也「おまえさ、俺が甘いもの

A「好きじゃないのは知っておる」

雄也「…じゃあ聞くなよ」

A「これ私食べていい？」

雄也「元々おまえのじゃねーの」

A「ううん。クラスの子が髙木くんに渡してくれる？って言うから」

そう言って可愛らしくラッピングされたリボンを解き、綺麗に焼かれたハート型のクッキーを口に入れた。

プレゼントされるものは
まず間違いなく美味しい。

そんな私の様子を見て雄也は
一口も食べてないのに
この世の終わりのような顔をして
「太るぞ」と言ってきた。

確かに手作りクッキーはカロリーが高い。

そして雄也が甘いものを好んで食べないことだって知っているつもりだ。

だけど私にはどうしても、
雄也への愛が込められたクッキーを
食べたい理由がある。

A「だってもったいないじゃん」

雄也「おまえもいちいち貰わなきゃいいだろ」

A「だって貰うか貰わないか決めるのは雄也だもん」

雄也「俺は食わねーよ」

A「うん、それでも」

そう言ってもう一枚クッキーを口に入れると
雄也はまるで私を初めて見たかのように物珍しげに見てきた。

甘いものが好きじゃないと言いながら
まだ何か出てくるのを期待しているのだろうか。
仕方なく鞄の中からキシリトールのガムを取り出して
机を挟んで向かい側にいる相手に投げつけた。